「クスリの裏側」が疑わしいワケ

普段何げなく飲んでいるその薬、本当に必要ですか

高血圧で、数年前から定期的な通院を続けていた西日本に住む60代の女性が、7月からパタリとクリニックに来なくなった。前回の診療で女性はこう医師に告げたという。

「基準値が変わって私の値でも大丈夫になったそうですね。『降圧剤を飲み続けるとがんになる』って本に書いてあったのも気になっていて。もう通院はやめます」。

この女性の言う「基準値」とは、今年(2014年)4月に日本人間ドック学会らが発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」のことだろう。そこに示された数値は、各専門学会がガイドラインで示している上限値より高く、「健康とみなされる基準値が緩和された」などとする報道が相次いだのだ。

そんな中、『高血圧は薬で下げるな』『薬剤師は薬を飲まない』など、薬や医療の不必要性を論じる本が売れ行きを伸ばしている。普段、何げなく飲んでいる薬は本当に必要なのだろうか――。多くの人が疑わしい気持ちを抱き始めている。

相次ぐ不祥事で製薬業界への信頼も失墜

このところ、製薬会社による臨床研究の不正や疑惑が次々と噴出している。世界第2位のノバルティス ファーマは、高血圧治療薬「ディオバン」に関する臨床研究に社員を送り込み、自社製品が有利となるようなデータの改ざんを行っていたことで元社員が逮捕された。それに続き、国内最大手の武田薬品も、高血圧治療薬「ブロプレス」で同様の不正を行っていたことが明らかになった。国内の高血圧患者は800万人とも言われており、ブロプレスは1000億円級の市場規模を持つ大型薬。競合ひしめく中で製薬会社も必死だ。

また、こうしたケースでかかわった医師はもれなく奨学寄付金を受け取っていた。その額は億単位に上るものもある。国から研究機関に対して豊富な予算が支給される米国と異なり、日本の先端研究は企業の資金に支えられている。一方、2年前に医師に対するMR(医薬情報担当者)の接待が規制されるまで、平日は食事による接待、休日はゴルフに付き合い、必至で自社製品を売り込むのがMRの日常だった。

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