コトラー教授の提案する「よい仕事」とは?

『グッドワークス!』企業が善行をして、業績を上げる

「企業の社会的責任は利益最大化である」?

よい仕事をしようとするすべての人のためのバイブル!『グッドワークス!』フィリップ・コトラー、デビッド・ヘッセキエル、ナンシー・リー著/ハーバード社会起業大会スタディプログラム研究会訳、東洋経済新報社、2014年9月刊

世の中のほとんどの企業が、よいことをしてよい業績を上げたいと考えているだろう。それは、企業のトップだけではなく、入社したばかりの一社員でも同じだと思う。それでは、社会は企業のことをどのようにみているのだろうか?

よく引き合いに出されるのは、ノーベル経済学者の故ミルトン・フリードマン教授が1970年に論文に記した「企業の社会的責任は利益最大化である」という見解だ。この見解は、その後、多くの企業経営者の強く意識するものとなり、特に金融市場において、利益最大化を目指す企業が高く評価されてきたのは疑いのない事実である。

しかし利益最大化の過剰な追求の副産物として、企業の不祥事や不正、違法行為なども後を絶たない。こうした流れに一石を投じたのが、ゼネラル・エレクトリック会長兼最高経営責任者ジェフリー・イメルトの2008年11月に国際的なCSR会議(ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ〈BSR〉の年次大会)での発言、「企業には金を稼ぐこと以上の責任がある」 (『グッドワークス!』より)という見解で、今日、主流の見解として認知されている。

企業の果たすべきことは利益最大化だけではない

コーン・コミュニケーションズが2011年に世界10カ国で行った消費者調査によると、過半数の消費者が、「企業には利益を生み出すことを超えた社会的責任がある」と答えている。一方、企業に、「稼ぐことだけでよい」と答えた消費者はわずか6%だ (『グッドワークス!』より)。 消費者が企業に求める水準は利益だけではないということだ。

それでは、企業は社会的責任に対してどのように考えているのだろうか? ボストン・カレッジ企業市民センターが2013年秋に231社(米国企業およびグローバル企業で米国に拠点のある企業)を対象に行った調査(ボストン・カレッジ企業市民センター「2013年プロフィール・オブ・プラクティス」)によると、企業が企業市民として社会的な取り組みを行うことの目標に「世間での評判(レピュテーション)を上げること」を挙げている。

この調査は、対象企業に社会的取り組みを行ううえで、最も大切な3つの目標を尋ねている。そして、この「世間での評判を上げること」を3番目までの目標に挙げた企業は実に7割を超えている。次に多かった目標は「従業員の確保」(約45%)、「優秀な人材の採用」(約41%)、そして「新規顧客の獲得」(約33%)が続いた。

フィリップ・コトラー(Philip Kotler) ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院インターナショナル・マーケティングS.C.ジョンソン・アンド・サン特別教授。 マーケティングの世界的権威のひとりであり、今日までの約40年間に発表された著作物は世界のマーケティングの流れを定義づけてきた

企業が自社の製品やサービスを通じてではなく、社会的取り組みに対して消費者を含めた社会における評判の向上を目標に置いているという事実は、フリードマン流の企業経営では生き残れないことを企業が実感していることを表しているのではないだろうか。

このように、企業は、世間での評判を高めるために社会的な取り組みを行い、一方、消費者は企業に稼ぐ以上の社会的責任を求めている。マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー教授は、限られた自社のリソースやネットワークを活用しながら取り組む企業の社会的取り組みについて『グッドワークス!』という本で解説している。ここでは「グッドワークス!」企業の1社であるクロロックス社について同書から紹介しよう。

次ページクロロックス社はどのように評判を高めようとしているのか?
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