乗車5分、「世界最短の国際列車」はなぜ存在するか マレーシア―シンガポール間、近い将来姿消す?

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マレーシアとシンガポールを結ぶ「世界最短の国際列車」(筆者撮影)
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鉄道旅行好きなら一度は体験してみたい、国境をまたいで走る「国際列車」の旅。しかし、世界最短の2国間列車は、所要時間わずか5分、走行距離も2.1kmと、旅心がくすぐられる前に終わってしまいそうな超短距離区間だ。

国際列車として目下、世界最短と認知されているのは、マレーシア南部のジョホール・バル(Johor Bahru=JB)とシンガポールとを結ぶ「シャトル・テブラウ(Tebrau)」だ。

コロナ禍により、両国間の出入りは約20カ月にわたって厳しく制限されてきた。しかし、11月29日からワクチン接種完了者を対象に、入国後の隔離を不要とする「ワクチン・トラベル・レーン」(Vaccinated Travel Lane、VTL)の枠組みで往来が再開されることとなり、陸路国境による出入りも認められることになった。ただ、残念ながら鉄道はマレーシア国内の電化工事のため運休しており、列車での国境越えは当面不可能だ。

しかし、なぜそんな短い区間だけを走る国際列車が存在するのか。その歴史と現状を追ってみることにしたい。

わずか2kmを往復する国際列車

マレーシアとシンガポールを結ぶ鉄道は、マレー半島の突端にあるジョホール・バルと島であるシンガポールを結ぶ堤防(コーズウェイ)上に道路と並行して敷設されており、単線のメーターゲージ(軌間1m)の線路が通っている。コロナ前時点での運行本数は、ジョホール・バル発が16本、シンガポール発は12本だった。

ジョホール・バルとシンガポールを結ぶコーズウェイ(筆者撮影)

国際列車が走るのは、マレーシア側のJBセントラル駅とシンガポール側のウッドランズ(Woodlands)駅間。2.1kmと短いのはそれぞれの施設が堤防両端のほど近くに設けられているからだ。運行は1本の編成が行き来するのみで、日中は概ねJBセントラル駅から出発した列車がウッドランズ駅で55分間滞留後に折り返し、その後JBセントラル駅で10分間停車して再び折り返すというダイヤになっている。

JBセントラル駅は駅名が示すとおり街の中心部だ。だが、シンガポール側のウッドランズ駅は繁華街から20km以上離れている。どうしてそんなへんぴなところに置かれているのか。実はこれこそが、「世界最短の国際列車」になってしまった大きな理由でもある。

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