リニア新幹線と標高3000mの自然の気になる関係 生物多様性維持という観点で懸念を払拭できるか

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3000m級の山が連なる南アルプスはユネスコの生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に登録されている(写真:山崎由晴氏提供)
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リニア中央新幹線静岡工区について静岡県が着工を許可していない問題で、南アルプスの自然生態系(生物多様性)の保全が焦点となってきた。背景にあるのは、トンネル工事による地下水位の低下という難問。高山植物や絶滅危惧種の魚はどうなるのか。これまで注目された水問題(トンネル工事による大井川の水量減少)や工事で出る建設残土問題に加え、生物多様性の維持という点で、JR東海は県や関係者の懸念を払拭できるのか。

南アルプストンネル工事による地下水位低下という難題

リニア中央新幹線東京―名古屋間の建設事業について、JR東海は7年前、2014年8月に国の環境影響評価法に基づく環境アセス手続きを終了した。静岡県の環境アセス条例には、国の環境アセス手続きが終わった後もフォローできる仕組みがあり、県はこれに基づいてJR東海に説明を求めたり意見を表明したりしてきた。

工事による地下水位の低下は、2020年7月、静岡県とJR東海の対話を促すために国が設けた有識者会議に提出されたJR東海の資料により明らかになった。トンネル掘削20年後に最大で300m以上も地下水位が低下すると予測している。国の環境アセス手続きでは示されなかったことだ。

初めて公になったこの予測により、大井川源流部で地下水位の低下を原因とする沢枯れや沢の減水が起き、沢筋に生息する生物や高山植物を含む植生を支える山の生態系全体に影響が及ぶのではないか、との懸念が浮上した。

こうした懸念をめぐり、昨年12月から断続的に、静岡県側の専門家とJR東海が同じテーブルにつき、検討を重ねてきた。議論の場は、静岡県中央新幹線環境保全連絡会議の生物多様性部会専門部会。10月22日には、専門部会が静岡県庁で約7カ月ぶりに開かれ、JR東海が新たな資料を示して説明を行った。

リニア中央新幹線静岡工区の位置(静岡県資料から)
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