ヒロシマがあぶり出す密集地の巨大リスク 専門家は「3・11より深刻」と危機感
「山がふくれている。全員、下りなさい!」
広島県警の警察官が、こう叫びながらふもとから駆け上がってきた。「ふくれている」とは尋常な表現ではない。捜索現場に続く道を重機でならしていた自衛隊員も撤退し始めたのを見て、さすがに写真など撮っていてはまずいと山を下りた。
広島市を襲った土砂災害発生から3日目の8月22日午後3時ごろ、最大の被災地域である安佐南区八木3丁目地区に再び最大級の緊張感が走った瞬間だった。
結局、山の異変はそれ以上に見られず、1時間後に捜索は再開された。しかし、その間にあらためて避難を決断した住民らが現れ、避難所はますます窮屈に。現場から最も近い梅林(ばいりん)小学校の体育館へ駆け込んだ八木3丁目の男性(69)は「山がおかしいというので初めて避難所に来たが、こんなに人がいるとは。今夜は隅で寝るしかないか…」と声を落とした。
「こんな形で避難所暮らしになるなんて・・・」
自宅は辛くも土石流の直撃を免れ、家族は市外の親戚宅に身を寄せられているという。それでも、裏口の窓から素足で避難する途中、石が当たって傷ができたという足首を痛そうにさすってこう言った。
「神戸や東北の地震があって、うちの地域でも避難訓練をやろうという話は何回かあった。でも実際にやったのかどうか、私は経験しなかった。こんな形で本当に避難所暮らしになるなんて…」
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