円安ドル高進み、1ドル103円台前半に ストップロスを巻き込み上昇

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 8月20日、午後3時のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点からドル高/円安の103円前半だった。日経平均株価が小高く始まるとじり高となり、ストップロスを巻き込みながら上昇した。2013年9月撮影(2014年 ロイター/Adrees Latif )

[東京 20日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点からドル高/円安の103円前半だった。日経平均株価が小高く始まるとじり高となり、ストップロスを巻き込みながら上昇した。ただ、足元の相場の動きは一服しており、もう一段の上昇は今後に控えるイベントの内容次第との見方が出ている。

ドルは103円前半と、約4か月ぶりの高値圏で推移している。7月の貿易収支が市場予測を上回る赤字となり、日経平均が小幅高で始まると、ドル/円は一時103.00円まで上昇した後、売り買いが交錯する中でじり高となり、正午過ぎにはストップロスを巻き込んで急伸した。IG証券の石川順一マーケットアナリストは、日米欧の株高に加え、今週あたりから米金利も株高に追随する動きがあり、ドル高を支援していると話していた。

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を週末に控え、イベント前の警戒感から投機筋によるドルの買い仕掛けが観測されたという。議長講演のほか、目先ではきょうの海外時間に米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録の発表を控えており、事前にある程度のポジションを作ろうとする動きが出ていたもよう。

ただ、午後3時ごろには、相場の動きは再び一服しており「ドルがさらに一段踏み上がるかどうかは、今後のイベントの内容次第だろう」(国内金融機関)との声が出ていた。

一方、ユーロはドル高を受けて弱含んでおり、1.33ドルが攻防ラインになる。1.3300ドルに厚めのオプションバリアがあり、同じく防戦のビッドも厚めに入っているもよう。ここが突破されれば、その下にはストップロスが控えており、下落幅を広げる可能性がある。このため「1.33ドルを割れれば、それ以降は1.32ドル台の展開に移行するだろう」(IG証券の石川氏)との見方が出ていた。

FOMC議事録、FRB議長講演に寄せられる関心

きょうの海外時間に発表されるFOMC議事録の内容に関心が寄せられている。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「ハト派とタカ派の水面下での綱引きが焦点」と話している。すでに発表済みの声明文では、労働資源の活用不足が依然として著しい、インフレ率が2%を恒常的に下回り続ける可能性はやや減ったなどとしている。

出口戦略の詳細についても触れられているとみられるが、神田氏は「誰も経験したことのない異例の金融緩和からの出口になるため、どういう結果や効果があるかはわかりにくく、相場は反応しにくい」(神田氏)と話していた。

一方、週末に控えたイエレンFRB議長の講演への関心も高い。足元で強含んだドルについて、野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは「(議長講演に向けて)見切り発車組が出てきているようだ。夏休みから戻ったヘッジファンド勢が戦線復帰している側面もあるだろう」(池田氏)と指摘。週末に控えたイエレン議長の講演では目立った材料は出ない可能性があるとみており「このままドルロングが積み上がり続けると、議長講演で失望のドル売りという反応が一時的に出てきてもおかしくない」(池田氏)と話していた。

イベント後の市場反応としては、クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司エクゼクティブ・ディレクターは、議長講演でポジティブなコメントが出ずに失望感からドルが売られたとしても「一時的な動きにとどまるだろう」との見方を示していた。先行きのドル高に対する市場の期待感は衰えていないとの見方が背景にある。

貿易収支は予想上回る赤字

市場では4─6月期に落ち込んだ実質国内総生産(GDP)が7─9月期にどこまで回復してくるか注目されており、朝方の貿易収支で今後の輸出の動向を確認したいとする向きもあった。

財務省が発表した7月貿易統計速報によると、貿易収支(原数値)は9640億円の赤字で、ロイターがまとめた市場予想(7025億円の赤字)に比べて赤字幅が大きかった。

輸出は前年比3.9%増の6兆1886億円で3カ月ぶりに増加。地域別では、米国向けが同2.1%増、中国向けは同2.6%増だった。一方、輸入は同2.3%増の7兆1526億円で2カ月連続で増加した。

今後の焦点は、欧州向け輸出の動向だとの指摘もある。ニッセイ基礎研究所のシニアエコノミスト、上野剛志氏は「ウクライナでの地政学的リスクの関係で欧州経済自体が悪くなってきている。欧州が低調になれば中国経済が悪影響を受け、ひいてはアジア経済にも影響が及びかねない。経済情勢の下振れリスクが高まっている可能性があり、今後の輸出の重しになるかもしれない」と話す。

 

(平田紀之)

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