2大旅客機、ボーイングとエアバスの意外な違い パイロット視点で見たそれぞれの設計思想

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また、エアバスのオートパイロットのパネルと同じようにシンプルなのがフラップ・レバーのパネルです。ボーイングは、フラップ(離着陸時に揚力を大きくする装置)の下げ角を表示しますが、エアバスは単なる番号表示です。

エアバスA350のフラップ・コントロール・パネル(左)は単なる番号の表示だが、ボーイング787のフラップ・コントロール・パネルは下げ角を表示している

緊急時は半自動のボーイング、全自動のエアバス

ジェット旅客機には、エンジン火災など機体に異常や不具合が発生した場合、パイロットに状況を知らせるシステムが必要です。

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ボーイングはEICAS(エンジン計器&クルー警報装置)と呼ばれるシステムを採用しています。エンジンの運転状況を表示する機能に加えて、機体の異常に対応する警報メッセージをカラー表示する装置です。

異常時、パイロットがその状況を把握し、操作を開始するために操作手順項目のページを選択すると、警報メッセージとリンクした操作手順が表示されます。これは、アナログ時代、機体故障の警報音や警告灯が作動した場合、故障状況を把握してから、対応する紙のチェックリストを開いて実施する手順と同じです。

一方、エアバスが採用しているのはECAM(電子式集中型機体監視装置)と呼ばれるシステムです。ECAMはボーイングと同じように機体システムの故障などに対して警報メッセージをカラー表示するシステムです。

ただパイロットが選択しなくても、警告メッセージとともに対応する操作手順や図式化された故障箇所が自動で表示される点で、ボーイングと大きく違っています。

中村 寛治 航空解説者

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なかむら かんじ / Nakamura Kanji

神奈川県横浜市出身。早稲田大学卒。全日本空輸株式会社にて30数年間、ボーイング727、747の航空機関士として国内の主要都市、世界10カ国以上、20都市以上の路線に乗務。総飛行時間は1万4807時間33分。

現在は、エアラインでのフライト経験を生かし、実際に飛行機に乗務していた者から見た飛行機のしくみ、性能、運航などに関する解説や文筆活動を行っている。

おもな著書に『カラー図解でわかるジェットエンジンの科学』『カラー図解でわかるジェット旅客機の操縦』『カラー図解でわかるジェット旅客機の秘密』(サイエンス・アイ新書)、『ジェット・エンジン(運用編)』『空を飛ぶはなし』(日本航空技術協会)、『面白いほどよくわかる飛行機のしくみ』(日本文芸社)などがある。

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