日本版カジノは、愛されるディズニー型に シンガポールに勝つ、アジア最強のカジノとは?

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今日のカジノ経営というものは、犯罪組織とはもちろん無縁で、不正が絶対にないのは当然のこととして、贅沢な非日常的体験を提供するとともに、ギャンブル以外の家族向けアトラクションも用意しなければならない(この辺はJRAと一緒だ)。

そしてお得意様に対しては「コンプ」と呼ばれるきめ細かな割引を実施し、さらには巨額な賭けをしてくれる「ハイローラー」と呼ばれる超お得意様に対しては、ジェット機での送迎に始まるVIP待遇でもてなすという、複合的なサービステクニックの集大成なのである。

日本版カジノを創るなら、ギャンブル界のTDRを目指せ

今では覚えている人も少ないだろうが、日本で初めてディズニーランドが誕生した時に、多くの人は懐疑的であった。しかし今日の東京ディズニーリゾートは、30年以上の努力によって本国にもないような施設とサービスを発展させ、今やアジアの観光名所として揺るぎない地位を確立している。いわばアメリカのノウハウに日本流の「おもてなし」の心を加えて、新たなサービスの体系が生み出されたわけだ。

「日本版カジノ」が目指す究極の理想とは、ギャンブルの世界におけるTDRなのではないか、と筆者は秘かに考えている。

新たなビジネスとしてのカジノ論をつい熱く語ってしまった。実際のところ、筆者も過去にはラスベガスやマカオやソウルのウォーカーヒルのカジノでエンジョイしている口である。国内ではもっぱら競馬ばっかりですけどね。

ギャンブルの話は難しい。やらない人には魅力を伝えられない。まして嫌いな人に対して、「日本にもカジノを」と説得するのは至難の業だ。そのせいもあってか、推進に向けてのIR議連の説明は腰が引けていて、お世辞にも上手ではない。反対論ばかりが聞こえてくる中で、少しずつ既成事実を積み上げているように見える。

ギャンブラーとしての繰り言はここまでとして、最後にエコノミストとしての妄言を少しだけ。

今は世界的に生産力が上昇し、昔に比べて暇な人が増えている。それから途方もない富裕層もできているのだが、彼らには富と時間の適当な使い道がない。この状況を放置しておくと、雇用が足りないし格差も固定するということになりかねない。だから積極的に、「遊び」をビジネスとして創造する必要がある。

その意味で、世界的にツーリズムが活況を呈しているのは良い傾向といえる。人の移動は需要に限りがない。究極の平和産業でもあるし、環境に対する負荷も小さい。特に日本のように高齢化が進んだ先進国の経済活動が、「モノづくりから思い出づくりへ」とシフトしていくのは自然な成り行きであろう。

いわば「必要性の経済学」の時代が終わり、「遊民経済学」が求められている。そんな中で、日本版カジノは挑戦する値打ちのあるビジネスだと思うのである。この思い、当コラムの読者にはシェアしてもらえるのではないだろうか。

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