平和不動産、切っても切れない東証との「蜜月」 株主総会で露呈したガバナンス上の大問題

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株主提案は否決されたが、東証との蜜月関係は見直しを迫られている(記者撮影)

東京証券取引所を筆頭に、大阪、名古屋、福岡の取引所ビルを保有する平和不動産の株主総会が6月24日、開催された。注目を集めたのは海外ファンドが提出した株主提案だ。東証や大阪取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)からの役員受け入れ(天下り)の禁止や政策保有株の売却などを定款に記載するよう求めた。

株主提案はいずれも否決されたものの、天下り禁止と政策保有株売却の提案賛成率はそれぞれ19.5%、19.3%と一定の支持を集めた。総会後も積み残された課題として付いて回りそうだ。

歴代社長はすべて東証出身者

平和不動産と東証の関係について、株主提案を行った香港の投資会社「リム・アドバイザーズ」がやり玉にあげているのは、東証が入居するビルの賃料だ。リムによると、証券会社が集積し、「証券の街」と称される日本橋・兜町界隈のオフィス賃料相場は坪2万3500円(月額、2021年3月時点)。

さらに東証ビル付近で平和不が開発中のオフィスビル「KABUTO ONE(カブトワン)」では坪3万円台後半でテナント誘致が進んでいる。これに対し、東証ビルの直近の賃料は坪1万6650円であり、リムは「割安だ。テナントである東証からの『天下り』が低賃料の背景にある」と指摘している。

平和不の歴代社長は旧東証出身者で占められ、6月の株主総会で承認された現取締役9人(全員再任)のうち、土本清幸社長を含む3人が東証OBで、新任の監査役も東証出身だ。前社長の岩熊博之氏(2020年2月に死去)に至っては、東証時代にテナントとして平和不との賃料交渉を担当していた。平和不の役員は古巣に対して、賃料改定にあたって強気に出られないというのがリムの理屈だ。

東証ビル賃料が安すぎるという指摘は今に始まったことではない。東証ビルの竣工間もない1991年3月期の年間賃料は66.2億円で、ピーク時の1998年3月期には73.6億円にも達した。が、1999年3月期以降は契約更新ごとに据え置きや減額が続き、2016年3月期には27億円まで下がった。

半期ごとの決算説明会では、東証との賃料交渉の進捗に関する質問がアナリストから飛び出すのが恒例で、2020年3月期に久方ぶりの増額改定を勝ち取った際には一時株価が急騰した。

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