太平洋の真ん中でエンジン停止したらどうなるか そのときパイロットはどんな操作を行うか

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エンジン停止による降下を開始する前には着陸する空港を決定しておかなければなりません。戻るならUターン、緊急着陸ならば着陸に適した空港へ向けて方位を変針、目的地まで継続するには高度の変更のみ、といったように機首の方位も考慮しながら降下する必要があるからです。

緊急着陸の空港の選び方は?

では、いつ、どのような時点で最適となる空港を決定するのでしょうか。そこで登場するのがETP(イコール・タイム・ポイント)です。

例えば、東京~ホノルル間の距離は最短距離となる大圏コースを選ぶと約6200kmあります。そして、ETPは東京に戻るもホノルルに向かうにも同じ所要時間となる地点をいいます。しかし、ETPは真ん中の3100km地点になるとは限りません。向かう方向により対地速度が違うからです。

東京に戻るときには偏西風により対地速度が遅くなるため、ETPを3100kmよりも東京寄りの地点にしなければなりません。偏西風が強くなる冬ほど対地速度の差は大きくなるため、ETPは東京寄りの地点となります。

ここで問題が発生します。太平洋や大西洋を横断飛行する双発機は「ETOPS180」という運航が適用されています。ETOPS180を適用する運航では、エンジンが不作動となった場合に「180分以内に着陸」できなければなりません。

このETOPS180を適用して運航する場合、東京とホノルル間でETPを設定すると、東京、ホノルルのどちらに着陸するにしても飛行時間が180分を超えてしまいます。

そこで、東京とミッドウェイ間のETP1とミッドウェイとホノルル間のETP2を設定し、それぞれのETPにおいてどちらに向かうか意思決定する基準点としています。そして、いつでも緊急事態に対応できるように、60分あるいは30分ごとに東京、ミッドウェイ、ホノルルの天候をチェックしています。

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