NTT分割をもくろむソフトバンクの狡猾

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NTT分割をもくろむソフトバンクの狡猾

総務省を舞台に、通信業界のガリバー、NTTの分割をめぐる議論が再燃している。この問題を検討する有識者らの作業部会から中間報告を受けた原口一博総務相は5月18日、「年内に結論」との方針を示した。

2006年以来となる業界の大論争は、いよいよ本格化する。震源地はまたもソフトバンクだ。

「光(ファイバー)100%というミッションが突然降りてきて、われわれは困惑している」。13日の討論会で、作業部会メンバーでジャーナリストの佐々木俊尚氏がそう漏らしたように、今回の議論は原口総務相の“変心”によって急速に進展した。

昨秋の就任当初は「(NTTの)切り刻み論は2周遅れの議論」と、支持基盤であるNTT労組寄りととれる発言をしており、分割には消極的とみられていた。

原口大臣が突然の“変心” 背後には孫社長の影

だが3月に入り、年末に自ら掲げた「2020年に光ファイバーの普及率100%」の構想について、急きょ5年前倒しすることを作業部会に指示。現在約3割にとどまる光ブロードバンドの利用率を100%に引き上げる必要性を強調した。その実現のために、NTTの組織形態見直しについての指令が浮上した。

大きな方針転換の背後に何があったのか。

年明けから大臣室周辺には、無署名のある資料が出回っている。「税金を使わずに光で日本を元気にする方法」--。その内容は、光ファイバーを全国にあまねく引く独占的な事業会社を設立し、そこに現NTTの持つ加入者回線(引き込み線)を集約、全事業者が公平に借りられるようにするものだ。

大枠は4月20日にソフトバンクが総務省に出した案と変わらない。原口総務相と接触する孫正義社長の動きも明らかとなり、降って湧いた分割議論の背後には、ソフトバンクの影がちらつく。

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