尾身氏の「反乱」が揺さぶる菅政権と五輪のゆくえ 最大のポイントは五輪1カ月前の「最終判断」

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これまでの尾身氏の言動などから、関係者の間では「つねに政府寄りの立場で発言するので、いわゆる『御用学者』にしか見えない」との見方も多かった。だからこそ「今頃になって突然、五輪開催に待ったをかけるような発言は、コロナ後も見据えた保身」(医師会幹部)と揶揄する向きもある。 

五輪主催都市である東京での新規感染者数は6月に入っても減少傾向が続いており、政府は20日の緊急事態宣言期限に合わせて18日に対策本部などを開き、東京などの宣言解除を決定。五輪1カ月前となる23日までに開催と観客の上限などを最終決断する方針とみられている。

18日の緊急事態宣言解除は可能なのか

その場合、最大のポイントとなるのは18日の対策本部後に想定される菅首相の記者会見での発言だ。五輪開催の意義や目的について、菅首相はここにきて「安全安心な大会を実現することにより、希望と勇気を世界中にお届けできる」と情緒的な説明を繰り返している。

18日までの段階で、東京の感染状態がステージ4を脱却してステージ3(感染急増状態)からステージ2(感染漸増段階)に近づいているなら、「宣言解除は理論的にも可能」(政府筋)とみえる。

菅首相が「感染拡大阻止の唯一最大の切り札」(側近)とするワクチン接種が急加速していれば、「7月23日の五輪開会の段階で高齢者の大半が接種済みとなり、多少のリバウンドがあっても東京がレベル4になって4度目の緊急事態宣言を発令する事態は避けられる」(官邸筋)と期待する。

ただ、相次ぐ変異株の拡大など不確定要素は多く、肝心のワクチン接種も各地で混乱が起きて国民の不安が一向に払拭されていないのが実態だ。このため、政府部内では「五輪開催のために宣言を解除しても、翌日からまん延防止等重点措置に切り替えて、五輪直前まで実質的な厳しい規制を続けるしかない」(政府高官)との見方も少なくない。

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