カプコンの買収防衛策、なぜ否決された? 海外IR担当の小田民雄副社長に聞く

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 会社側の議案が否決――。6月16日に開かれたカプコンの株主総会で、異例の事態が起こった。2008年に導入した買収防衛策は2年ごとに継続を提案して可決されてきたが、今年は反対多数となったのだ。否決された背景には、海外機関投資家の増加が影響している。
 さらに7月4日、カプコンは筆頭株主の異動を発表した。筆頭株主に躍り出たのは、資産運用会社の米ハリス・アソシエイツ。昨年3月に株式5.51%を取得してから徐々に買い増し、今年6月末時点で10.28%を保有するまでになっている。それまでは創業者・辻本憲三会長の一族が運営する資産運用会社・有限会社クロスロードが9.42%を保有する筆頭株主だった。
 急速に存在感を増す海外機関投資家と、カプコンはどう向き合うのか。2003年頃から海外IRを担当する小田民雄副社長に話を聞いた。

 可決危ういとは思っていた

おだ・たみお 1946年生まれ。三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)やユニ・チャーム常務などを経て、2001年カプコン取締役に就任。04年専務執行役員兼CFO(最高財務責任者)、11年副社長に就任。(撮影:田所千代美)

――株主総会で買収防衛策の議案が否決された。
 議案が通るかは、相当きわどいなと思っていた。これまで海外機関投資家比率は25%から30%超だったが、今年3月末に37.2%まで上昇していた。さらに昨年4月に自社株を買い増したことで、自社株比率は過去実績でピークとなる16.9%になっていた。株主総会では約20%が欠席するため、自社株を除く議決権ベースだと海外投資家比率が55%程度になってしまう。

ここまで海外投資家比率が上昇したのは、アベノミクスの影響です。個人投資家が株を売る一方で海外機関投資家が日本株を買ったが、そのほとんどが米国東海岸の機関投資家だった。カプコンは海外IRに積極的で、年に欧州2回、東海岸2回、西海岸1回、アジア2回の説明会を実施している。買収防衛策の議案は2年ごとに決議してきたが、昨年3月から今年は危ういと思っていた。

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