日本が世界5大ウイスキーに入った衝撃的理由 はじまりは「自称」だった可能性が非常に高い

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実は、私は『マッサン』のウイスキーの時代考証を担当させていただき、脚本から読んでいました。それでも、毎朝の放送が楽しみでなりませんでした。ウイスキーづくりに情熱を注ぐマッサンと、数々の困難が降りかかっても太陽のようにほがらかなエリー。2人の生き様に感動を覚えた方も多いのではないでしょうか。

『マッサン』をきっかけにウイスキーに興味を持った方も多かったようで、2015年には、北海道の余市蒸溜所に年間90万人もの観光客が足を運んだそうです。

ドラマには鳥井信治郎をモデルとした“鴨居の大将”(堤真一)も登場しており、そのつながりで、サントリーの山崎蒸溜所や白州蒸溜所にも多くの観光客が訪れたと聞いています。

輸出増の背景にある品質の高さ

2009年以降、国内のウイスキー消費量は順調に回復していきました。また、ウイスキーの輸出も着実に増えていきました。

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ウイスキーの輸出金額で見ると、2013年は39億8000万円(対前年比160・7%)、2014年は58億5000万円(同147・0%)、2015年は103億7800万円(同177・4%)と、対前年比で2桁の伸びを見せています(国税庁「酒類の輸出動向について」より)。

この勢いは2020年まで続いており、なんと清酒を抜いて国産酒類のトップに躍り出ました。その金額は約271億円にもなります。ジャパニーズウイスキーは今、世界中で引っぱりダコなのです。

ウイスキーの輸出増の背景にあるのは、言うまでもなく、ジャパニーズウイスキーの品質の高さです。ジャパニーズウイスキーは今や世界的な酒類品評会の上位の常連となっており、オークションに出せば大変な高値で取引されます。

サントリーの創業者・鳥井信治郎と、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝は、スコッチウイスキーをはじめとする世界のウイスキーに憧れて国産ウイスキーの製造に乗り出し、以来、その背中をずっと追いかけてきました。そして今、ジャパニーズは世界が憧れるウイスキーとなったのです。

土屋 守 ウイスキー文化研究所代表

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つちや まもる / Mamoru Tsuchiya

1954年、新潟県佐渡生まれ。学習院大学文学部国文学科卒業。フォトジャーナリスト、新潮社『FOCUS』編集部などを経て、1987年に渡英。取材で行ったスコットランドで初めてスコッチのシングルモルトと出会い、スコッチにのめり込む。日本初のウイスキー専門誌『The Whisky World』(2005年3月-2016年12月)、『ウイスキー通信』(2001年3月-2016年12月)の編集長を務め、現在はその2つを融合させた新雑誌『Whisky Galore』 (2017年2月創刊)の編集長。1998年、ハイランド・ディスティラーズ社より「世界のウイスキーライター5人」の一人として選ばれる。著書に『シングルモルトウィスキー大全』(小学館)、『竹鶴政孝とウイスキー』(東京書籍)など。

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