ISISがイラク侵攻、中東全体の秩序脅かす

過激派の勢力拡大で秩序の流動化が進みかねない

アル=カーイダから発展したISISはイラクの北部と西部で支配領域を拡大(写真:AFLO)

イラク北部と西部で「イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)」が支配領域を広げている。北部の中心都市モースルを陥落させた後、サダム・フセイン元大統領の故郷のティクリートや石油精製施設を抱えるバイジを支配下に収めた。シリアやヨルダンとの国境地帯も制圧し、シリアでの支配領域との一体化を進めている。

ISISの起源は、イラク戦争後の2004年にヨルダン出身のアブー・ムスアブ・ザルカーウィーがイラクで結成した、「唯一神信仰とジハード団」である。この組織がオサマ・ビン・ラーディンに忠誠を誓い「イラクのアル=カーイダ(AQI)」と改称したことから、世界各地でフランチャイズのように「アル=カーイダ」を名乗って緩やかに共鳴する諸集団の代表格となった。

諸勢力が連合し急拡大

ザルカーウィーは、米軍に加担して権力を握ったシーア派主体の政権を宗教の敵と見なし、シーア派を「逸脱」とする扇動を行い、宗派紛争に火をつけた。このようなイスラーム教徒の社会を分断する宗派主義的な思想は、それまでのアル=カーイダの思想には希薄だった。

ザルカーウィーらはアル=カーイダの「第2世代」とも呼ばれ、20年までに各地の政権を打倒して世界規模のイスラーム国家を建設するという構想を温めていた。ザルカーウィーは06年6月に米軍の攻撃で死亡するが、AQIはほかの武装勢力と共闘して、同年10月に「イラクのイスラーム国家(ISI)」の設立を宣言したのである。

07年から翌年にかけて、ブッシュ政権は米軍の大増派(サージ)を行い、掃討作戦と政治的取り込み策を併用してAQIを地域住民や指導層から孤立させ、活動を鎮静化させた。そこで、オバマ政権は11年暮れに米軍をイラクから撤退させたが、イラクのマーリキー現政権は政治的取り込み策を継承せず、むしろスンナ派諸勢力を敵視し疎外したため、武装勢力の活発化と住民の中央政府からの離反をもたらした。

次ページISISが拡大した背景
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
メルカリ&ZOZOTOWN<br>流通新大陸の覇者

流通業界で新旧交代が起きている。新しい主役は「ネットで服は売れない」という常識を覆したゾゾタウンと、フリマアプリで新市場を作ったメルカリ。拡大する流通新大陸をリポート。