今年度内に燃料電池車を売るトヨタの勝算 コストやステーションの課題解決には長期戦

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FCVは二酸化炭素一切出さない

ただし、水素ステーションの整備という最大の課題は残っている。現在、水素ステーションは、全国で12カ所。日本政府は2015年度内に、100カ所程度に増やす目標を掲げ、補助金や規制緩和による後押しを進めている。それでも全国で3万7000あるガソリンスタンドと比べた少なさは一目瞭然で、一般家庭で安心してFCVを使う状況にはほど遠い。

水素ステーションがなければFCVは普及せず、FCVが普及しなければ水素ステーションの整備が進まない。いわゆる“ニワトリと卵”の問題を、どうクリアしていくか。トヨタだけではなく、エネルギー業界や国も含めた、今後の取り組み次第となる。

まずは三大都市圏中心に投入へ

トヨタは当面、首都圏や愛知県、大阪府など、水素ステーションの整備が予定されている地域を中心に、販売していく。環境への意識の高い個人や企業などへの販売を目指すが、当然のことながら、初年度から多くの台数が出るというシロモノではない。

むろん、トヨタもそれは覚悟の上。加藤副社長は「長い長いチャレンジの始まり」「10年、20年は覚悟している」と言い切った。

(撮影:梅谷秀司)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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