STAPはなかった!理研CDB解体の是非 科学への信頼は回復できるのか

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理研の竹市CDBセンター長

また、CDBにはiPSによる網膜再生研究の高橋政代博士をはじめ、トップクラスの研究者が集まっている。提言では研究者の「雇用を確保したうえで」と断ってはいるが、解体して白紙からの出発となれば、研究環境が維持されるとは限らず、落ち着いて研究することは困難だ。

自律と信頼をベースとして成り立つ科学の世界で、自覚のない人物の抜擢は失敗だ。しかし、すべての博士に再教育しなければならないとしたら、博士号の意義自体が問われる。

課題が埋没する可能性

理研、CDBの最大の誤りは、問題発覚後すぐに失敗を認めてきちんと検証しようとせず、あいまいなまま収めようとしたこと。研究に対するのと同様、失敗を認めて、客観的事実に基づき、ウミを出し切ってから出直す覚悟が重要だ。解体は本質的解決にはならない。むしろ残された課題を埋没させる危険がある。

提言は、運営主体のメンバーが長年交代もなくなれ合いが生じ、結果として独善を拡大させた、と指摘している。それならば、CDB自らが運営メンバーを刷新し、任期を明確に規定し、不正を防止しうる新しい組織を作り上げていくのが本道だろう。

理研本体に研究公正推進本部を設置することも提言されているが、研究不正の防止に悩むアカデミアが共同で米国の研究公正局のような第三者機関を作ることも、一つの方法だ。

週刊東洋経済2014年6月28日号〈6月23日発売〉掲載の「核心リポート03」を転載)

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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