TiKToKで若者大ウケ「異色タクシー会社」の正体 苦境を打開するための大胆すぎる経営戦略

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60年近い歴史を持つ三和交通の3代目社長として、吉川氏が就任したのが29歳のとき。三和交通は関東を中心に7つの営業所を展開し、関東でも中堅クラスの規模を持っている。それでも26歳で制作会社から移ってきた吉川氏にとって、タクシー業界は特異なものに映った。

「入社した時に机に置いてあったのが灰皿1個だけで、パソコンとかもいっさいなかったんです。僕より年下の社員が1人もいなくて『この環境はヤバいぞ』と」

まず着手したのは離職率の低下のための環境改善と、2003年から始めた新卒採用だった。今でこそ業界最大手の日本交通などでは新卒を年間200人以上採用しているが、当時はタクシー業界全体で新卒採用を行う会社はごくわずかだった。実際に開始して3年ほどは3、4人ほどしか採用に至らなかったという。

それでも徐々に採用人数が増えていき、近年では年間で20人を数えるまでになった。そして、当時採用した新卒達の半数近くが現在は管理職として在籍している。

すべての企画は「採用活動につなげるため」

昨年の10、11月ごろまでは前年比の8割近くまで回復しつつあった業績は、感染者増加で12月から再び厳しいものとなっている。だが、「新型コロナウイルスの影響により、プラスになった面もある」と吉川氏はいう。

全国のタクシー会社が例外なく頭を悩ませているのはドライバーの高齢化と、新規採用の手法だ。三和交通ではコロナ禍の今だからこそ他業種から若い転職者数が増えて、昨年比でも大幅に増えているという。

特筆すべきは、2021年度入社の新卒採用を通常年の2倍の約40名と拡大させていることだ。稼働台数が約600ということを考えれば、新卒採用者が占める割合はかなり多いといえるだろう。

「すべての企画は売り上げを伸ばすためではなく、採用活動につなげるためのもの」と、吉川氏の指標はブレない。

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