転機の時こそ、人間の器が試される 窮地に陥っても「考えろ、考えろ、考えろ」

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多様性こそが力

筆者の仕事ですが、経営共創基盤(IGPI)という150人(連結3500人)ほどの会社でパートナー(共同経営者)として唯一無二な会社を模索し実験中です。顧客はスタートアップから売り上げ数兆円企業、各国政府まで問わず、アドバイス内容は事業からM&A実行、メディア対応まで多岐にわたり、紙をつくるより実行で価値を出そうとしています。自己投資の機能を持ち、バス会社からエンターテインメント、バイオ企業まで出資が可能という自由度を掲げています。

IGPIの株主はメガバンク、証券会社、総合商社、リクルートのような企業まで10社以上になりますが、議決権はパートナーのみが持っています。個人的には経営の自由度やクリエーティビティを担保するためにはIPO(株式公開)は避け、パートナーシップを貫くべきだと考えており、この経営体制も実験的です。

このキャリア相談でも、普段からお客さんに対しても、多様性こそが力だと申し上げているので、筆者が責任者を務めるシンガポールオフィスでは日本人以外でチームを組成し、多国籍、多言語のプロを集め、英語を共通語にしています。人に言っていることを自分でやってみる実験です。

「あいつは終わったな」と言われて

これまで筆者は幸か不幸かいろいろなことに巻き込まれながら、なんとか仕事をしてきました。20代の頃はどんクサくて月に400~500時間仕事をしつつも、付加価値を出せなかったために周りには「右脳っぽいよね(=バカですね)」や「世界の5%に入れないと意味ないだろ(=非エリートは辞めれば?)」と言われつつやってきました。自分に出せる価値がないため、「いつでもそこにいる」ということにしようと思い、社会に出てから病欠をしたことが一度もありません。

筆者はいろいろな事件に巻き込まれ、「あいつは終わったな」や「あいつにかかわらないほうがいいよ」と何度も言われました。“香ばしい”方々や国家権力にも真正面からかかわった経験は、今では危機管理やメディア対応のアドバイスに生きていますし、「深淵をのぞくとき、深淵も同じようにお前をのぞいているのだ」といつも唱えています。今のところ、無駄なことというのはないものだと思います。子供の頃やった、はんだ付けやプログラミング、演劇など、何でも役に立っています。入社1年目にやらされたシュレッダーされた紙の再生など、すてきなネタです。

また、人は言ったことをすぐ忘れるので、それを気にしても意味がないと思いました。人との対峙という意味では、合気道の大家である塩田剛三氏が弟子から「合気道でいちばん強い技はなんですか?」と聞かれ、「それは自分を殺しに来た相手と友達になること」と言ったと伝えられていますが、その神髄の片鱗にでも触れられるように精進したいと思っています。

本連載でも「死にはしないから、とりあえず頑張ろう」や「健康な人は強く生きるべきです。正しい人が強くなるか、強い人が正しくなる以外に、社会に救いはありません」と書いておりましたが、本連載の縁あってお会いした学生の方に「死にはしないから、頑張ろうよ」と申し上げたら「実は不治の病でして」と言われたこともあります。詳細は記載しませんが、その方にも精いっぱいのアドバイスをいたしました。軽口は慎んだほうがいいようです。

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