がっつり系"黒船"バーガー、捲土重来の勝算 「カールス・ジュニア」が18年ぶりに日本再上陸

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とはいえ、日本でカールス・ジュニアが根付くかというとそう簡単でもなさそうだ。その理由の1つが、ボリュームを差別化材料としているところだ。

外食産業の調査を行っているエヌピーディー・ジャパンによると、ハンバーガー店を利用する15~29歳の男性が店舗選択をする際に「ボリュームがあること」を理由にする割合は、2011年の10.5%から2013年には7.0%まで減少している。一方、「料理の量がちょうどよい」と回答する割合は、7.0%から10.1%に上昇した。

つまり、日本の若い男性がハンバーガー店を利用する際、「ボリューム」を重視する傾向が弱まっているということだ。顧客ターゲットを若い男性と位置づけるカールス・ジュニアがボリュームをウリとしていくのは、現在の若い消費者のニーズと合致しているとは必ずしもいえないだろう。

もう1つのハードル

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看板商品の「オリジナルシックバーガー」

さらに、健康志向の高まりも無視できない傾向だ。エヌピーディー・ジャパンの調査によれば、外食時に「つねに健康を意識している」「時々意識している」と回答した人の割合は2012年が62.5%、2013年は63.5%になったという(全世代が対象)。

実際、健康を意識した商品・マーケティング戦略を実践に移す外食企業も目立ってきた。

モスフードサービスが展開する「モスバーガー」では、4月から、これまで主流だった9時や10時という開店時間を7時に切り替え、朝食営業を強化した(SC内など一部店舗は除く)。早起きの顧客ニーズを狙うと同時に、商品面ではサケの具材をはさんだライスバーガーを投入するなど、シニア層や健康意識の高い消費者の取り込みを狙う。

ロイヤルホールディングスが運営する「ロイヤルホスト」も、4月からサラダを中心に添えたランチメニューの本格投入に踏み切った。モスバーガーと同様、健康を意識するシニア層や女性客を狙った商品で、順調なスタートを切ったという。

20年ぶりに日本に再上陸を果たすカールス・ジュニア。1号店がオープンすれば話題性もあり好調な出足となるかもしれない。ただ、健康志向が高まっている日本で、同社が掲げる1000店の展開というハードルを超えるのは容易ではない。単なる差別化ではなく、日本市場に適応した差別化商品を提供できるかが事業拡大のポイントになりそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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