東京五輪、競技はできるが観客は感染状況次第 新型コロナ対策分科会の岡部信彦氏に聞く

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――ワクチンを英国はもう打ち始め、日本も国策として確保に努めています。ワクチンには期待していますか。

もちろん期待はしている。しかし現段階で評価するべきデータが手元に届いていないので、良いとも悪いとも、まだなんとも言えない。メディアは95%、93%の有効性という数字を大きく報道するし、その一方で副反応が1人出ただけでも大きく報道する。また、接種直後に偶然、心筋梗塞を起こすこともある。そうした場合、本当にワクチンのせいなのか、正当に評価する必要がある。それらのためにも海外のデータだけではなく、国内の治験データも見据えて評価したい。ただ、評価してから接種の準備に取り掛かるのでは遅いので、今の段階での準備は必要だ。

ワクチンの開発には通常、10年以上かかる。今回はウイルスが見つかってから1年足らずでワクチンの開発研究から大量生産まで来ているのは、科学的にはものすごい勝利。ただ、皆の期待や不安が高まっている中で、アメリカなどで当局の関係者が「いついつ承認される見込み」というようなコメントを出すのはルール違反ではないか。最初から結論ありきのようにコメントすれば、専門家委員会が審議する必要はないということになってしまう。国内ではそうなってほしくないと思う。

効果と副作用のデータを見極め、議論して判断する

――効果とリスクについてはどう考えるのですか。全員分を確保、無料というと、かなり強く推奨する印象になります。

効果が30%しかなくても病気のリスクが高い、かかったら危ないのなら、採用するというのも1つの考え方だし、効果が90%あるが30%は副反応があるという場合は、どの程度の副反応ならば受け入れられるのか、という議論もでてくる。また、ワクチンには個人がかからないようにするだけでなく、広がりを防ぐという意味合いもある。

――インフルエンザは、高齢者は定期接種ですが、ほかの人は任意接種です。

新型コロナウイルスに対するワクチンは、多くの人に接種することによってそれぞれの人の健康被害を少なくするとともに、多くの人への感染の広がりを防ぐという目的から、臨時接種という方法を採用することになった。つまり国はワクチンを用意し、接種費用は国が負担し、万が一の副反応の事故に対しても国が救済をする。しかしあくまで、強制力を持つものではない、というスタンスだ。

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