過去最高の活況「ふるさと納税」の新たな課題 最新!実質住民税「流出額」ランキング

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ふるなびの広報担当者は「広告記事の出稿や配送代行の対価としていただいている」と説明する。ただ、運営企業のアイモバイルの業績のうち「ふるなび」を含むコンシューマ事業は、営業利益率が約3割と高水準だ。

本来は自治体に入るはずの住民税が、高率の手数料に形を変えていると言わざるをえない。手数料率が非公開のため顧客側の自治体が比較しづらく、健全な競争が起きていないのも問題だ。

ふるなびは元横綱力士の貴乃花を起用したテレビCMなど、年間10億円規模の広告費をかけているが、東京のテレビ局に多額のCM放映費用を流すことが地方自治体のためになっているとは言いがたい。ソフトバンク系の「さとふる」も同様に、芸人の東京03を起用したテレビCMに多額の費用を支出している。

寄付金額もポイント還元の対象

最近勢力を伸ばしている「楽天ふるさと納税」は、ポイント還元に多額の費用をかけている。基本的に寄付した金額の1%分の「楽天スーパーポイント」が付与され、さらに楽天のほかのサービスの利用状況などに応じてポイント還元率が上がる。こちらも、現金に近い形で多くのポイントを還元することが、地方自治体のためになっているとは言いがたい。

集客に多額の費用を投じるポータルサイトは手数料率が高くなるが、法律で「経費は寄付金額の5割まで」の上限が設けられている。自治体側としては手数料が増えると、返礼品を減らすか寄付金額を引き上げるしかない。

そのひずみは金額に表れている。12月23日の同時刻に「楽天ふるさと納税」と「ふるさとチョイス」を比較してみると、北海道白糠町の返礼品「いくら醤油漬(鮭卵)500g(250g×2)」をもらうために、楽天では1万5000円の寄付が必要で、ふるさとチョイスの1万4000円と比べると1000円高い。ユーザー側も冷静にサイトを比較する必要がありそうだ。

ふるさとチョイス運営企業の親会社であるチェンジの福留大士社長は、「儲けすぎというのは心外な批判。地域を活性化するための投資の原資をいただいている、というくらいに思っている」と語る。同サイトはテレビCMを打たないこともあり、運営会社の利益率は4~5割と高水準だ。稼いだ利益をどのように地方の投資に回すのか、注視する必要があるだろう。

地方自治体のふるさと納税担当者は、寄付の受け入れを増やすために創意工夫を続けている。彼らの努力のかいあり、返礼品は地域事業者の活性化につながっている。ふるさと納税を持続可能な制度にしていくためには、さらなる見直しは必須だろう。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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