アップルが進める、囲い込み戦略とは? WWDC2014でみせた「アップルにしかできないこと」

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たとえば、開発者に聞くと、フェイスブックがリリースしたAPPLINKSのような、アプリ間のリンクを提供する連携機能が発表されなかった点など、まだまだアップルのプラットホームとして対応してほしい機能は山積しているという。しかしそうした制限の中で、開発者はこれまでも、すばらしいアイデアを試し、受け入れられてきた。

今回の新しいAPIは、1年で消化しきれるか心配になるほど、ビジネスやゲーム、あるいはアプリ間の組み合わせなどによって、さまざまな変化をもたらすことになるだろう。

アップルにしかできない垂直統合のユーザー体験を強化

今回のWWDCで、特に一般のユーザーにとって起きる変化として、アップルデバイスへのより強い囲い込みによって得られるメリットが増える、ということだ。つまりMacを使っていればiPhoneが便利だし、iPhoneを使っていればMacを持つべき、という状況になりつつあると言うことだ。

象徴的なのはiPhoneへの音声通話の着信をMacで受信できる機能や、iPhoneで書きかけのメールをMacに引き継いで完成させるといった機能。またMacがネット接続を持たない際、近くにあるiPhoneのテザリングを使ってネット接続を確保するホットスポット機能の拡張も行われている。

これまで以上に強い連携を、OS X YosemiteとiOS 8で実現していくことになるが、こうした連携は、スマートフォンとタブレットしか持たないグーグルのAndroidにも、スマートフォン分野がきちんと普及していないマイクロソフトにも提供できないユーザー体験といえる。

こうした連携を強めていくことは、再び「オープンではない」との批判もあるかもしれないが、多くのユーザーにとってメリットを提供できる「アップルを使う便利さ」を作り出すことになるはずだ。そして、WWDCに集まっている開発者、集まりきれずその模様を追いかけている世界中の開発者たちの熱が、新たなアイデアを生み出していくことになるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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