安倍前首相、「桜」疑惑はなぜいま再燃したのか 遠のく院政、突然の地検捜査に「官邸陰謀説」

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その後、NHKなどが「補填総額は916万円」「ホテル側が出した領収書を安倍事務所が廃棄した」など、この問題を大々的に報じている。さらに、「東京地検が近く、安倍氏自身からも事情を聴く」と踏み込んだ報道も飛び出している。

疑惑が再燃する形になった安倍氏は24日、「今回、告発を受けて捜査が行われていると承知している。私は国会で答弁させていただいているが、事務所としては、告発を受けて全面的に(捜査に)協力していくということだ」と述べる一方、詳しい説明については「途中経過の段階なので、お答えは差し控えたい」と述べるにとどめ、記者団の質問も受け付けずに立ち去った。

その一方で、菅首相は25日の衆参両院での予算委集中審議で「捜査中の問題で答弁は控える」とガードを固め、安倍氏の参考人招致や証人喚問も「国会が決めること」と否定的見解を繰り返した。ただ、自らの国会答弁が結果的に虚偽だった場合の責任を問われると、「そうなれば答弁した私にも責任がある。それは対応する」と苦渋の表情で答えた。

官邸の情報リーク説も

今回の疑惑再燃で政界関係者が注目したのは、メディアの報道ぶりだ。疑惑が表面化して以来、追及してきたのは朝日、毎日、東京各紙などいわゆる「安倍政権批判」グループだった。ところが、今回口火を切ったのは、「安倍政権擁護派」とみられていた読売で、すぐさま追随したのも政権寄りの姿勢が目立つとされたNHKだった。

このため、政界では「読売が先行したのは菅政権がリークしたからではないか」との声が広がった。菅政権発足後は、政界でも「安倍前政権以上に官邸が司法をコントロールしている」(立憲民主幹部)との声も多く聞かれた。今回の地検の動きについても、「菅首相と上川陽子法相、さらに加藤勝信官房長官や杉田和博官房副長官(事務)に検察側から事前報告がなかったはずはない」(閣僚経験者)との見方が支配的だ。菅首相ら官邸側は「地検の動きを知りながら後押しもしくは黙認していた」(同)という読みだ。

安倍氏や菅首相は「報道で知った」と口をそろえるが、「安倍前政権発足以来の官邸と検察の関係からみて、それはありえない」(自民長老)との声が相次ぐ。「少なくとも官邸サイドは検察から報告を受けていたはず」(同)というわけだ。

8月末に持病悪化を理由に突然退陣表明した安倍氏は、菅政権が本格始動した9月までは表舞台での活動を控えてきた。しかし、10月に入ると大好きなゴルフを再開。各種の会合のほか、メディアのインタビューにも積極的に応じることで存在感をアピールした。

当面の政局についても「私なら1月に解散する」と発言し、「キングメーカー気取り」(自民長老)との評も広がっていた。そして、党内保守派の安倍氏支持グループからは、「2021年9月の総裁選出馬による再々登板を期待する」との声が相次ぐほどだった。

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