「アマゾンの薄利多売は真似できない」 AWS担当上級副社長にクラウドサービスを聞く

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サービスとサービス内の機能数も他社を圧倒している。ただ単に機能が多いだけでなく、それをどれだけ早く、どんどん出し続けられるかというイノベーションのスピードも私たちに勝る会社はない。12年度には1年間で新サービス や新機能を159リリースし、13年にはこれが283になった。今年は現時点ですでに昨年を上回るペースでリリースしている。

もう一つ重要なのは、パートナーのエコシステムだ。たとえば、クラウドのような大きな技術のシフトが起き、企業がシステムを移行しようと考えたときに、それを支援してくれるようなシステムがあるということは企業にとっては非常に心強い。

急に初めても成功しない

AWSのビジネスの基本は薄利多売だ。私たちはいずれすべてのコンピューティングはクラウドに移行すると考えているが、それはすなわち自然に薄利多売ビ ジネスになることを意味している。

一方、競合企業はハイマージンのビジネスをやってきたが、これはAWSとはビジネスのやり方や考え方がまったく違う。こうした古い体質のテクノロジー企業には薄利多売のビジネスはできないので、AWSが登場してしばらくは一生懸命プライベート・クラウドを売り込もうとしていた。

われわれのビジネスモデルは彼らにとって破壊的だったわけだ。にもかかわらず、多くの企業がAWSに移行しているため、ハイマージンのビジネスをしていた企業も一転、AWSのようなオファーをするようになってきた。が、薄利多売ビジネスは急に始めて成功できるものではない。この中の 何社が生き残るか興味深く見ている。

(撮影:今井康一)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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