ボックス、日本でもスタートアップ投資検討 アーロン・レヴィCEOが語る成長戦略

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 シリコンバレーで多くのベンチャーキャピタリストから「Genius(天才)」と称され、注目を集める経営者がいる。アーロン・レヴィ、1985年生まれの29歳。「Box(ボックス)」を創業したCEOだ。
 レヴィCEOは学生時代からビジネス一筋。いくつかの事業に躓いたあと、9年前の2005年、20歳の時に創業したボックスは、企業に特化したクラウド上のドキュメント共有サービスとして急成長を遂げた。「ボックスはまったく新しい会社だ。10年以上変わらなかった企業システムのあり方を根底から変える可能性を秘めている」ーーサイボウズの青野慶久社長は、こう絶賛する。
 売り上げは2013年1月期の5880万ドルから2014年1月期には1億2400万ドルへと飛躍した(損失も1億1260万ドルから1億6860万ドルへと増加)。顧客数は2014年1月末時点で「22万5000社以上、フォーチュン500企業のうち99%で採用」という驚異的なものだ。ただし、有料会員比率が高くない点には注意が必要だ。顧客企業22万5000社以上といっても、有料会員は「3万4000社以上」である。
 3月24日にはニューヨーク証券取引所へのIPO(株式公開)を目指し、証券取引委員会に申請書を提出。2億5000万ドルを調達して、更なる飛躍を狙う。5月下旬に初来日したレヴィCEOの情熱あふれる語り口、めまぐるしく変わる表情は、確かに「天才」の雰囲気にあふれていた。

働き方が変わる

ーーボックスのクラウドサービスを利用する企業が増えている背景はどこにあると思うか。

いま、世界が大きく変わりつつある。それにあわせて仕事のやり方も、大きく変わってきている。ゆっくりではなく、ものすごい速さで、だ。これにあわせて企業も変わらざるをえなくなっている。より速く、よりもっと、外部と協力し合う時代になった。1人1人の社員がタブレットなどの新しいデバイスを使い、世界中のパートナー、顧客、発注先と協業する時代がやってきたのだ。

今までのビジネスは、基本的に社内で閉じており、階層的な情報のやり取りになっていた。非常に厳格な流れのワークフローでシステムを組んでおり、データのやり取りも階層的だ。今でもほとんどの企業が階層的だ。

それを壊し、もっと俊敏性、柔軟性をもち、自然にどんどん変わっていくものにしなければならない。新しいテクノロジーをいかにうまく使って変化に対応できるかが、キーポイントだ。今は、クラウドをデリバリーモデルとして活用すれば、企業はインフラの心配をする必要がない。管理は第三者にやってもらえばいいわけだ。マイクロソフトのような企業内システムを提供してきたベンダーは、真の意味での新しい価値を提供できていない。古いシステムの完全な置き換えを目指す点がボックスの特徴だ。セールスフォース・コム、ネットスイート、ゼンデスクなどとともに、新しい市場を切り開いている。

ーー前期の売り上げの伸びが大きい。IPOを意識して契約時に将来の利用料を前倒しで認識するような会計処理を行っているのではないか。

売り上げの認識については標準的な方法を採っている。何か変わったことを行って伸びたわけではない。急成長している理由は、ヴァーティカル市場(ヘルスケア、ライフサイエンス、金融サービス、メディアなど)への投資に加え、国際展開の加速にも思い切った投資を行ったためだ。実際、ユーザーの伸びは大きい。たとえばGEが顧客になったことで新規に30万のユーザーが加わっている。ユーザーの伸びに比例して利用料収入が増えている。

ーーアマゾンのクラウドサービスAWSは利用料の値下げを繰り返している。グーグルなども含めて値下げ合戦の様相だ。ボックスの利用料戦略は?

二つの考え方があると思う。一つは顧客に同じサービスを提供し続けて価格を下げていくというもの。もう一つは、価格は同じに保ちながら、提供する価値を拡大していくという考え方だ。ボックスは、価格を据え置きながら提供価値を増やしていく道を進んでいる。

例えば、使えるストレージの量が増える、データ処理のスピードがさらに速くなる、或いは顧客の要望に応じて次々に新しいコンテンツ管理サービスが追加される。検索にしても、安全性にしても、常に価値を高め続ける。しかし、同じ価格で提供していきたい。

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