ローランド創業者はなぜMBOに反対なのか 楽器業界の"レジェンド"が胸の内を明かした

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――非上場化自体に「100%反対」というわけではないということですか。

ローランドは3年くらい前まで、自己資本比率も80~90%近い超優良会社だった。一方で資金をうまく回せない会社だという評価もあったが、当時はそれで回っているのだからいいと思っていた。そうするとある意味、上場の必要はない。実際、かつて上場を廃止することを検討したこともある。

ただ、今回経営陣から出てきたMBOと一緒くたにされると困る。僕は一度上場を廃止するなら絶対再上場はありえないと思っている。事務経費もバカにならないからだ。ところが、今回のMBOはファンドが利益を出すために再上場させることが濃厚だ。これではローランドにも財団にも何も利益はない。ファンドが儲かるだけ。

株売却を決めた理事会は無効

――TOBに応じるかを最終決定する評議員会が延期されているのはなぜか。

理事会の招集は理事長である私が行うものと(財団の)定款で決まっているが、今回の(TOBに応じるかを決める)理事会は、専務理事が勝手に招集し、なぜか私のところにも招集通知が来た。

その時に強行された多数決でローランド株式の売却が決まったとされているが、そもそも会自体が無効なのだ。弁護士に頼んで、無効であるという文書を作り、理事や、(理事会の決定を受けて行われる評議員会の)評議員全員に送ってある。ローランド株は財団にとって大きな財産だ。そんなに急いで売却を決めることはできない。

――現経営陣の問題点はどこにあると考えているか。

浜松市にあるローランドの本社工場

たくさんあるが、顕著な例は海外の関係先と築いてきた信頼関係を壊してしまっていること。ヨーロッパの生産拠点を閉める際にも、現地の生産会社の社長から私のところに本社とのコミュニケーション不足を嘆くメールが来た。

海外展開をするにあたって、ローランドは古くから現地の会社と50%ずつを出資して合弁会社を作り、さらに現地の人を社長に任命して全権を任せて仕事をしてきた。ところが、最近ではローランド側がこの株を買い、日本人が上級のポジションに就くようになっている。権限を取り上げて仕事がうまく行くのか。

そういう風に取引先、関係先に対して、相手の気持ちを考えないようなやり方をしてしまえば、信頼を損なってしまう。これはもう、ローランドの基本の理念がズレてきてしまっていることだ。

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