ローランド社長がMBOに込めた改革の思い 創業者と対立、どこで意見が食い違ったのか

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ローランドの三木社長は、MBOによる構造改革のスピードアップの必要性を訴える
MBO(経営陣による買収)をめぐり揺れている、電子楽器の老舗・ローランド。TOB(株式公開買い付け)の期限が6月25日に迫る中、筆頭株主であるローランド芸術文化振興財団がこれに応じるかが確定していない。
財団の理事長でローランドの創業者でもある梯(かけはし)郁太郎氏は、「アートウエア」(芸術の領域に入るもの)を手掛けるローランドの経営と、短期的な利益を追求する投資ファンドの手法は相性が悪いと指摘。MBOに反対している。
音楽界の“レジェンド”である創業者の反発に、経営陣は何を思うのか。ローランドの三木純一社長に聞いた。
※ 梯氏のインタビュー記事「ローランド創業者はなぜMBOに反対なのか」こちら

MBOで構造改革にカタをつける

――そもそも、MBOに打って出ようと思ったきっかけは。

4期連続の最終赤字を受け、やはりスピード感をもって構造改革をしなければと強く思ったことだ。これまでも売上高の増減や、ディーラーさんとの関係に注意しながら未曾有の改革に取り組んできたが、今、残りの課題を一気に進めるべき時に来ている。

特に危機感を覚えたのは、今年の初めに海外の楽器ショーに行った時。中小企業やベンチャーも含め、競合の開発スピードがぐんと上がっていた。業界各社はどこも厳しいはずなのに、私たちより早く構造改革を終わらせ、また成長路線に乗せるために舵を切っているのだ。

ベンチャーは特に脅威だ。営業部長、開発部長などの重要ポジションに就く人がみんな若い。発想も非常に自由で、従来の楽器店販路だけでなく、ウォルマートのような量販店販路でうまく業績を上げているような例も出てきている。

そんな中にあって、残念ながらローランドは遅れている。1周遅れどころでなく、2周、3周遅れだ。彼らに追いつくためには、これまでの2倍、3倍のスピードで改革を進めなければならない。

ただ、複数の改革を同時に行うにはリスクもある。上場していれば、株価や利益の増減も気にしなければならず、株主への説明責任も発生する。そこで、今回MBOを成功させて資本と経営を完全に一体化させ、短期間に構造改革のカタをつけるというのが狙いだ。

――梯氏は投資ファンドが経営に入ることに強く反対していたが、その点をローランドの経営陣としてはどのように考えているか。

MBOによる立て直しが成功するかどうかには、端的にいうと2つの大きな要因があると思う。1つは借入金の大きさと、それをきちんと返せるかというファイナンス上の問題。もう1つは資本(ファンド)側の考えと経営陣の考えがきちんと一致するかという運営上の問題だ。

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