求心力よりも遠心力が働く野党陣営 小沢離党、結いの党結成に続き維新分裂

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石原元東京都知事が「小異を捨てて大同に」と唱えて日本維新の会と合流したのは前回の総選挙の直前だったが、1年半で離別となった。石原氏が「自主憲法制定」「原子力推進」の主張を曲げず、最終的に「大同」を無視したからだ。

5月半ばにインタビューした維新のキーマン、浅田均政調会長は「都知事だった石原さんとは、大都市連合で日本を変えていく、地方を元気にするということで一致していたが、国政に戻ると、先祖返りしてしまって。僕らは合併のときに書いた合意文書に則って進めてきたのに」と明かした。

与党側では、集団的自衛権問題で安倍首相側と公明党の路線対立が顕在化しているが、いまのところ、遠心力よりも、政権与党としての求心力が上回り、連立解消騒ぎには至っていない。一方、現在の野党陣営は、いつも求心力よりも、遠心力が働く。民主党の小沢グループの離党、みんなの党からの離脱による結いの党結成に続いて、維新分裂である。

今回の分党は維新と結いの党との合併問題が原因だが、維新の橋下代表は、結いの党だけでなく、野党再編という「大同」をにらんでいるのは間違いない。浅田氏は「望むらくはプラス民主党の一部」と語り、民主党の非官公労系も含めた野党勢力の大結集を目指す。来春の統一地方選で敵味方に分かれて戦うと、大結集が困難になるという認識に立って、早ければ今夏、遅くとも年内に再編実現というスケジュールを想定しているようだ。

だが、「大結集」のかけ声とは裏腹に、中規模の新党に終わるのでは、正体不明の烏合の衆となるのでは、といった懸念は消えない。最大の不安材料は、新勢力の統一ビジョン、価値観と達成目標の共有、路線と政策の一致といった点だろう。結集の際の表向きの合意文書だけでなく、国民の期待感を背に受けて新しい政治を実現するという強い意志と実行力を兼ね備え、結束と団結を生み出すパワーを持った指導者を擁することができるかどうかがカギだ。

失敗すれば、今度も求心力ではなく、「遠心力の党」となりかねない。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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