ダイヤモンド社の本は、なぜ売れるのか? 特別対談 ベストセラーを生むための編集と営業(上)

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 2009年10月に創設された「ビジネス書大賞」。毎年、1 年間を代表するビジネス書を選出し、表彰している。2014年に受賞した作品は以下のとおりだ。
・大賞(経済書部門):『統計学が最強の学問である』(西内啓/ダイヤモンド社)
・大賞(経営書部門):『経営戦略全史』(三谷宏治/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
・書店賞:『伝え方が9割』(佐々木圭一/ダイヤモンド社)
・審査員特別賞:『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社)
 4賞のうち、3つをダイヤモンド社の本が獲得。現在のビジネス書界で、同社の力は際立っている。なぜダイヤモンド社の本ばかりが売れるのか? その謎を解くべく、書籍編集局第三編集部の和田史子編集長と、営業部の井上直部長に話を聞いた。

出版業界の営業はまだ甘い

佐々木:今日、聞きたいのは、ズバリ、なぜダイヤモンドの本はこれだけ売れているのかについてです。1冊、2冊ではなく、もう何年もベストセラーを出し続けている。これはまぐれではなく、何か構造的なものがあるはずです。そのあたりについて編集と営業両方の立場から、お話を伺えればと思います。特に営業のエースと呼ばれる井上直さんが、常日頃どういうことを考えているのかを聞きたい。

和田:まずはお目にかけたい「自慢の品」を持ってきました。今年の3月23日付で日本経済新聞に載ったジュンク堂さんのビジネス書売上トップ10という記事です。トップ10のうち7点が弊社の本です。

佐々木:井上さん、なぜこんなことができたのですか。

井上:何だか自画自賛みたいで恐縮ですが、書店さんのいい場所をしっかり押さえることができているということですね。コンビニでもスーパーでも、お店がいちばん売りたい商品は、人通りが多くて目立ついちばんいい場所に置いてありますよね。

そしてそこに並べてある商品の銘柄は、お店が違ってもたいてい同じです。出版社の営業マンや営業ウーマンが書店さんに働きかけて、自社の本をできるだけいい場所に置いてもらうようにすればいい。至極当たり前のことですが、それができているということでしょうね。いちばん売りたい商品を、いちばんいい場所に置いてもらうことは必須です。

佐々木:井上さんは元証券会社の営業マンだったそうですが、その経験と比べると、日本の書店営業というのは生ぬるいというか、甘いという感じはありますか。

井上:それはもう自戒を込めてですが、甘い部分があると思いますよ。でもほかの出版社の営業にも、問題意識の高い方は増えていますね。 良くも悪くも流通が整備されていますので、本は自動的にお店に配本されます。それである程度売れていた時代もあったと思いますが、今は営業がしっかり手をかけなければ、本は絶対に売れません。

佐々木:書店のいい場所を押さえるために、大事なことは何でしょう。

井上:「今度こういう本が出ます、作っているのはこういう人間です」「こういう広告を打ちます。こういうパブも入ります」といった本にまつわる情報を、より早く正確にお伝えすることですね。

佐々木:それをするには、編集と営業が、密接にコミュニケーションをとる必要がありますね。

井上:編集と営業の距離は近いですね。うちの営業は企画資料だけでなく、発売数カ月前くらいの早い段階からゲラ(製本前の校正刷り)を読んでいるので、「これは本当にいい本ですよ」という思いを書店さんに伝えることができています。

和田:編集も「こういう企画、ニーズがありそうですかね」と、企画書をつくる前に営業に相談に行くこともありますね。

井上:編集者が個別に相談に来なくても、編集者と全営業マンが一堂に集う会議を週1回開いているので、営業も進行中の企画をすべて把握しています。企画段階で情報が得られるので、書店さんの意見を聞いて、それを編集にフィードバックすることもできる。それが本のタイトルに反映されたりすると、やっぱり営業としては「張り切って売ろう」という気持ちになるし、内容に興味が湧くからゲラも読みますよね。

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