自分は不幸だと思う人は脳の使い方を知らない 従来の脳科学では引き出せなかった脳の鍛え方

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④ 利他の心を持つ

「まずは自分」と考えるのではなく、まずは他者のことを考える。これが「利他の心を持つこと」です。

スイス・チューリッヒ大学のハイン博士らの研究では、利他行動をした人は、脳内で島皮質と前帯状回、線条体という3つの部位がうまく繫がって活動したことが確認されています。

⑤ マインドフルネスを行う

ビジネス界でも注目を集めるマインドフルネスも、脳にいい効果をもたらします。マインドフルネスが脳の老化の防止に繫がるのです。アメリカ・ハーバード大学のガード博士の研究では、普段から、マインドフルネスを実践している人たちは、70歳になっても45歳のときの脳機能のままでストップしていたことがわかりました。

⑥ Awe(オウ)体験をする

大草原や大海原、あるいは星空など、自然を前にして圧倒される経験を、Awe体験といいます。カナダ・トロント大学のステラー博士らの研究では、Awe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかりました。

脳の使い方を変えない限り、脳は成長しない

6つのポイントは、考え方や行動そのものはオーソドックスなものが多いと感じたかもしれません。

そして、「もっと豊かに幸せに生きたい」「脳の機能を強化したい」と思うときの考え方や行動としては、意外なものが多いと感じたかもしれません。

『科学的に幸せになれる脳磨き 』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

「もっと収入を増やしたい」と思うとき、「だったら感謝しなさい、前向きになりなさい」と言われてもピンと来ない人は多いでしょう。私もそうでした。

でも、なぜピンと来ないかといえば、それは従来の脳の使い方にとらわれているためです。

たとえば「もっと収入が増えさえすれば、幸せになれるはず」「もっと良い学校に入れていたら、違う人生を歩めたはず」などと、私たちが「幸せになりたい」と願うときの脳の使い方には、いくつかのパターンがあります。

そして、私たちは普段そのような一定のパターンの脳の使い方を無意識にしてしまっています。ですが、豊かで幸せに生きるには、まずこの従来の脳の使い方を変えていく必要があるのです。

岩崎 一郎 脳科学者、医学博士

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いわさき いちろう / Ichiro Iwasaki

京都大学卒。京都大学大学院修士課程修了後、米国・ウィスコンシン大学大学院で医学博士号(Ph.D.)取得。旧通産省の主任研究官、米国・ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の准教授を歴任。脳科学を活用し、普通の知性の人たちが天才知性を超えるパフォーマンスを発揮できる組織づくりの企業研修を提供する会社「国際コミュニケーション・トレーニング株式会社」を創業。著書に、『科学的に幸せになれる脳磨き』(サンマーク出版)、『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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