ネズミに雨漏り、楢葉町被災者が苦しむ荒廃

「帰町判断」目前の原発被災地で何が起きているか

荒れ果てた自宅の片付けをする松田タケ子さん

原発事故によって、約7500人の全町民が3年以上に及ぶ避難生活を強いられている福島県楢葉町。5月下旬に予定されている町長による「帰町(帰還)の判断」を踏まえて、今後、町は国や福島県と避難指示の解除の時期や帰還の方法についての協議に入る。

そうした中で、住宅の荒廃が町民の生活再建を阻む深刻な問題になっている。

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東電社員による片付け作業を見守る松田タケ子さん

松田タケ子さん(74)は現在、身体に障害を持つ三女(47)とともに、千葉市内にある築46年の雇用促進住宅で避難生活を送っている。東京電力社員による自宅の片付け支援作業に立ち会うために、松田さんが楢葉町の自宅に立ち入ったのは5月2日。記者も同行して家の中に入った。

「とにかくネズミの被害がひどいんです。見てください、糞だらけで。洋服ダンスもネズミがかじって木屑だらけ。タッパーウエアのふたまでがりがりやられて。ネズミのおしっこのニオイもひどくて。これじゃとても住めません」

荒れ果てた室内を眺めて、松田さんが深々とため息をついた。

台所に足を踏み入れると、ネズミ捕りシートに大きなネズミがかかって死んでいた。雨漏りもひどく、天井にはあちこちに茶色いしみが広がっていた。長らく空気の入れ換えがなかったため、カビとネズミの尿が混ざったような異臭があたりに立ち込めていた。地震で白壁が落ち、階段にもきしみが生じていた。

「自宅には住めない」

同じ町内の渡邉弘子さん(60)宅でも、雨漏りやネズミによる被害は深刻だ。

福島県いわき市内のアパートで避難生活を送る渡邉さんが、避難後初めて自宅に足を踏み切れたのは2011年7月。全身が防護服姿での立ち入りで、滞在は2時間しか認められなかった。しかし、この時は雨漏りやネズミによる被害は見当たらず、渡邉さんはいずれ帰還できるだろうと考えていた。

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ネズミ被害を訴える渡邉弘子さん

異変に気づいたのは、その年の秋だった。台風シーズンが終わって11月下旬に2度目の自宅立ち入りをしたところ、雨漏りによるしみが天井に広がっていた。翌12年夏になると、今度はネズミが家中を荒らし回っていた。この期に及んで渡邉さんは「自宅には住めない」と覚悟を決めた。

今年4月に自宅に立ち入った際には、押し入れの前で子ネズミ4匹がシートにかかって死んでおり、畳には小動物の尿のようなしみが広がっていた。

楢葉町では住宅の除染が一通り終了し、電気や水道などのライフラインもおおむね復旧した。不通になっていたJR常磐線も、5月10日から広野駅‐竜田駅間での試運転が始まった。町の至るところに除染で発生した土砂や草木を入れた黒い袋が山積みにされている光景に不安を感じる住民は少なくないものの、放射線量が高く、町内に立ち入り禁止のバリケードが張り巡らされた北隣の富岡町と比べると、復旧が進みつつあることがわかる。

だからといって、避難指示の解除とともに住民の帰還が順調に進むとは考えるのは早計だ。それどころか、新たな生活再建の道筋が決まらず、精神的に追い詰められている住民は少なくない。

次ページ「私一人の力では自宅の再建はできない」
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