こうしてゼンショーは危機を乗り越えてきた ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(3)

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――じゃあ、これから先、次ですね。やっぱり世界戦略ということになりますか。

そうですね。国内もまだまだ可能性があると思っているんですけど、「ミニマム5」、2014年3月までの中計を発表していますよね。それを最低限やるということと、それから、おっしゃるような世界戦略をスピードアップしていく。これが2010年代ですよね。

――今までどっちかというと、小川さんが掲げていらっしゃるスローガンに比較して見た場合、海外については比較的手薄というか、スピードが遅いという感じがするんですが。

すき家については、去年から中国で展開段階に入って、ブラジルで今年から展開を始めたという段階ですから、まだ立ち上げ時期です。おっしゃるように、立ち上げというのは結構時間がかかるというか、労力が要る。その段階は、中国では基本的に終わってきたのかなと。立ち上げの第1期はね。だから、スピードは上がってくると思います。ブラジルは、ここからしばらく立ち上げの時期ですよね。

――中国では味千ラーメンというのがかなり大々的に展開したり……。

上場して向こうで成功されているようで。

ゼンショーの存在意義

――小川さんが考えられるゼンショー流の中国展開、あるいは世界戦略、描くとすれば、こういうユニークなところがあるぞと。どういうところで……。

僕がいちばん大事にしているのは基本的な考え方ですよね。これは国内でやってきたときも、やはりわれわれの企業の理念、世界から飢餓と貧困をなくす。津々浦々、マーチャンダイジングシステムを作って、そして自分らで汗をかいて、店でいえば直営店でやるということですよね。

自分らで汗をかくという基本的な考え方に基づいてやってきて、人材も優秀な人材が集まるようになってきた。世界もまったく同じ考えで、飢餓と貧困をなくする、そういう仕組みを世界に作っていくんだという考え方と、それから、今、中国とかいう話も出ましたけれども、あえて消費者と言いませんけど、相手国の国民にとって、われわれの蓄積が本当に役に立つかどうかということがレゾンデートルだし、相手国でやる意味だと思うんですよね。必要性でもある。

必要性のないところにやろうとすると無理があるわけで、もっと言っちゃうと、70年前、80年前、1930年代から、やっぱり中国マーケットが欲しいということで兵隊さんと一緒に行ったというわれわれの歴史がありますよね。そこは、ちゃんとわれわれが歴史総括をやっておかないといけないんじゃないのと。

ただ13億人のマーケットがあるから、あるいは国内マーケットが飽和したから出ていくとか、利を求めていくということは、やっぱり逆をやられたら、われわれも国民として、いい気はせんわけです。ましてや、そういう歴史的な経過もあるということはやはりきちっと頭に入れておいて、資本主義ですから、それぞれの企業のメンバーがそこのところをきちっと踏まえて、営業トークじゃなくて、本当に安全な食を提供するシステムを相手国が欲しているのかと。最大の判断軸は、われわれが安全な食の供給システムを作ることによって、相手国民と政府にとって利益があるのかということですよね。

――やみくもに進出ではないと。

やみくもに出るという考え方は、われわれの考え方では間違いだし、やるべきではない。だって、1930年代にやって失敗しているじゃないですか。

――小川さんが今、国内で作っていらっしゃるマーチャンダイジングシステムは中国に持っていく価値のあるシステムなんでしょう。

それは当然、われわれはあると思うから向こうでの展開を決断したわけで、ましてや日本と中国の間では、われわれもこの8年にわたってマーチャンダイジングシステムと提携するということを一緒にやってきているわけです。向こうでの検査システムであるとか、野菜が農薬で残留しないようなプロテクトをし、検査する仕組みとかいうことも8年かけてつくってきているんです。

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