「680円激安ステーキ定食」の裏側 外食の達人、都内某洋食屋で「ニセモノステーキ」に遭遇!

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スーパーで売れない「古米」が外食に回される

河岸「あと、この店はご飯がおかしいね。たぶん昨日炊いた古いご飯だね。下手をすれば、おとといの可能性もある。ご飯が乾いているし、少しすっぱくなっている」
N君「残ったものをジャーで保温しておいて、次の日に出しているんですか?」
河岸「そう。普通はその日炊いたものを出すけど、『ご飯はその日の炊きたてでなければならない』という法律は、どこにもないからね。店のモラルの問題。付け合わせのキャベツの千切りも、いつ切ったかわからない。パサパサに乾いているよね」

 

外食では、古米(1年前の米)、古古米(2年前の米)が実に多く使われています。その際、ふっくらつややかに見せかけるために「品質改良剤」「品質保持剤」あるいは植物性油などが多く使われます。

日本では不作に備えて150万トンほどの米を備蓄しています。古い米は5年前のものだそうですが、毎年、古い米から消化しなければなりません。

しかしこれはスーパーでは売れないのです。

みなさん2012年産よりも2013年産、2013年産よりも2014年産を欲しがります。スーパーでは産年の表示が義務づけられていますが、「古米」と書いてあると、安くても買ってくれません。

では、古米は誰が引き取るのか。

その答えは、外食や中食(調理済み食品)なのです。

コンビニのおにぎりが冷めてもおいしい理由

「なぜコンビニのおにぎりは冷めてもおいしく食べられるのだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

それは、コンビニのご飯は、新米が使われているからです。だから、おいしい。それだけのシンプルな理由です。

一方、激安外食店やチェーンの持ち帰り弁当のご飯は、冷めたらとても食べられたものではありません。それは1年前、2年前の米を使っているからです。ウソだと思ったら一度試してみてください。それくらい日本人は、米の味に敏感なのです。

私は何も「古米、古古米を使うのが悪い」と言っているわけではありません。外食産業が古米を消費してくれるのは日本国家、国民のために、ありがたいことです。

問題は、それを黙って使っていることです。

「外食の裏側」には、こうしたウソやごまかしがたくさんあります。野菜だって、輸入野菜の95%は外食に回され、しかもその半分は中国野菜だったりします。

しかし、今回紹介した「成型肉の見抜き方」のように、ちょっとしたコツで「おいしいもの」を選ぶことは可能です。サラダの見分け方やいい店、おいしい店の選び方、おすすめ全国チェーン店なども、新刊の中で詳しく書いています。

ぜひ「裏側」を知ったうえで、今日から使える「安くてうまいものを食べるスキル」を身に付けてください。

新刊はこちら→『「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。』(Kindle版はこちら

河岸 宏和 食品業界を知り尽くした男

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かわぎし ひろかず / Hirokazu Kawagishi

食のプロや業界関係者のあいだで「食品業界を知り尽くした」と言われる男。大手ハムメーカー、大手卵メーカー、大手スーパー&コンビニ、数々の食品工場での勤務経験から「肉のプロ」「卵のプロ」「スーパー・コンビニのプロ」とも呼ばれる。

1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、「農場から食卓まで」の品質管理を実践中。「食品安全教育研究所」代表。
これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハム・ソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、卵加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。

著書に『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)、『ビジュアル図解 食品工場のしくみ』(同文舘出版)などがある。
ホームページ「食品工場の工場長の仕事とは」を主宰。 
毎週発行している無料メルマガは、食品問題や事件が起こったときにすぐに解説するなど好評を得ている。

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