ヤフー、「イー・アクセス買収中止」の不可解 この2カ月間にいったい何があったのか
欲しいと言ったのもヤフーの宮坂学社長、いらないと言ったのも同じ宮坂社長――。もしこれが本当だとすれば、ずいぶんと軽率な判断をしたものだ。
ヤフーがソフトバンクから傘下の携帯通信会社イー・アクセス(6月にウィルコムと合併)を買収すると発表したのは3月27日。それからおよそ2カ月後の5月19日、買収中止を発表した。
当初から、やや理解に苦しむ買収だった。そもそもヤフーはソフトバンクの子会社。イー・モバイルがソフトバンク傘下からヤフー傘下に移ることで起こるのは、負債の肩代わりを含めた4500億円の現金の移動。東洋経済は、3月の発表当初から、キャッシュリッチなヤフーから、大型M&A続きで資金を必要とするソフトバンクへの資金移動に過ぎないのではないか、と指摘してきた。ヤフーが買収するメリットが見当たらないためだ。
株価は大幅に下落
そもそも、イー・アクセスの大半がモバイルWi-Fiルーターのユーザーだ。同じくウィルコムも「だれとでも定額」などの音声定額サービスが中心で、スマホユーザーは少ない。「スマホユーザーを取り込み、ネット広告を伸ばしたい」という宮坂社長の説明には飛躍があった。また、携帯ショップ1000店を取り込み、ヤフーの各種サービスを勧めるというのも、来店客にとってニーズがあるかどうかは不透明だった。
株式市場もこの買収を嫌気した。発表翌日28日の株価終値は514円と前日から6%を超える下落となり、昨年12月以来の安値に沈んだ。5月19日の終値は408円まで下落している。