コロナで医療界の苦境が15年前倒しになった 相澤孝夫・日本病院会会長が語る病院の将来

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新型コロナウイルスの感染拡大により、「将来予想されていた事態が15年も早く到来した」と語る相澤会長。「連携と機能分化なしに病院は生き残れない」と断言する(撮影:梅谷秀司)
日本病院会などの病院3団体は、新型コロナウイルス感染の拡大による病院経営への影響について定期的に調査を実施している。9月10日付で発表された7月分の経営状況調査結果(3団体に加盟する全病院〈4496病院〉のうちから222病院を抽出、回答数はうち177病院)によれば、入院患者および外来患者数は4~6月の大幅に落ち込んだ状況から回復傾向が見られるものの、前年同月比各11.2%、17.3%減と2ケタの減少が続いている。本業の収益力を示す医業利益率についても4月以降、赤字が継続している。新型コロナの流行が長引く中、病院が生き残るために必要な方策について、日本病院会の相澤孝夫会長に聞いた。

借り入れで急場をしのぐ

――新型コロナウイルス感染症が、病院経営に深刻なダメージを与えています。

政府による支援策もあり、倒産や医療提供を取りやめる病院が続出する状況は回避されている。新型コロナ対策として経営の悪化した医療機関向けに用意された独立行政法人福祉医療機構による無利子無担保融資の決定件数は8月31日時点で病院に関して1475件、金額では3728億円にのぼる。全国の一般病院の数は約7200であるから、借り入れによってしのいでいる病院が少なくないことがわかる。9月に予備費を用いて融資枠を広げてもらったのもありがたい。

――インフルエンザとの同時流行期も迫っています。新型コロナ流行の第3波、第4波が襲来したときに、どこまで持ちこたえられますか。

病院の倒産が相次ぐ事態は避けたい。そのためにも、融資条件の緩和とともに、貸出枠をさらに増やしてもらえるようにお願いしたい。将来にわたって返済していく資金であるので、財政負担にはならないと考えている。

―――とはいえ、政府の支援策にばかり頼ることも難しいのでは。

コロナ患者への対応に関しては、呼吸不全管理を要する中等症以上の患者を対象にした救急医療に関する診療報酬の加算が5倍に引き上げられたり、重点医療機関について病床確保料が大幅に上積みされた。こうした政府の施策により、コロナ患者の医療においては持ち出しがなるべく生じないように手当てされるようになった。他方、コロナ以外の一般医療に関しては需要が減ったままで、減収分への手当てはほとんどされていない。コロナの流行が一服しても、医療需要が元に戻る保証もないだけに厳しい状況が続くだろう。

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