アリ型よりキリギリス型が成功する時代 アリの「ストック思考」からキリギリスの「フロー思考」へ

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対するキリギリスは、知的資産においても「宵越しの知識は持たない」という「江戸っ子気質」である。その場で必要な知識はその筋の専門家から調達し、そこで新しいものを生み出したら興味はまた次の領域に移る。

キリギリスはつねに「今ないもの」から発想し、「未知」の領域に目が向いている。知識を活用するにも、あくまでも「未知のものを生み出すため」という目標が明確である。

先述のとおり「その道の専門家」はアリ型の思考になりやすい。対するキリギリスは「素人」の発想である。「白紙に枠を定義する」という問題発見のステージでゼロベースで考えるには、こちらのほうが向いていることは明らかだろう。専門知識という「知っていること」から発想するのがアリで、素人的に未知という「知らないこと」から発想するのがキリギリスと言える。

こうしてキリギリスの知的好奇心はつねに「新しい未知のもの」に向かっていく。キリギリスにとっては「できるとわかってしまったもの」はもはや興味の対象ではない。対してアリは「できるとわかっているもの」から実行していくことになる。

キリギリスがはた目に「飽きっぽい」と見えるのは、そういう理由による。「今あるもの」に粘り強く執着するという姿勢は問題解決には有効であっても、新たな問題を発見するときにはむしろマイナスに働くのである。

次回は2つめのポイントである「閉じた系」と「開いた系」の発想の違いについて解説する。

細谷 功 ビジネスコンサルタント、著述家

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ほそや いさお / Isao Hosoya

1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェローとなる。問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。

著書に『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』、『アナロジー思考 「構造」と「関係性」を見抜く』『問題解決のジレンマ イグノランスマネジメント:無知の力』(以上、東洋経済新報社)などがある。

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