JR西ベテラン社員が明かす「新快速」運転のコツ どっしり安定感ある117系、加速がよい223系

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当時、新快速に使われていたのは、国鉄時代に新快速用として開発された117系だった。それまでの153系が固定式のボックスシートだったのに対し、大阪―京都間で競合する阪急や京阪の特急車両と同じく、前後の向きを変えられる転換クロスシートを採用。木目調の壁や枕カバーが付いた座席など、豪華な雰囲気が乗客から好評を博した。

新快速用として開発された117系(筆者撮影)

「117系は運転台が広く、運転していてとても気持ちのよい車両でした。当時は冷房がない車両もまだ多いなか、117系は客室はもちろん運転台も冷暖房がよく効いたので、快適だったのも覚えています」

また、従来の車両は故障が発生した際、車両から降りて各機器を操作する必要があったのだが、117系は運転台で一部の応急処置を行えるようになった。「例えば、モーターが正常に動かなくなった場合、そのモーターを使わないようにする『ユニット開放』という処置や、車内の蛍光灯やクーラーに電気を供給する装置のリセットが運転台でできるため、安全で迅速な処置が可能となりました」

より運転しやすくなった221系

新快速は停車駅が少なく、また117系は最高時速が115kmまで出せる性能を持っていることから、運転に工夫ができるのも腕の見せどころだった。

「ここの踏切を時速何kmで通過すれば、その先のカーブをスムーズに曲がれる、といった具合です。加速やブレーキの操作をなるべく減らすことができれば、乗り心地がよくなり、お客様にも快適に乗車していただけます。見方を変えれば、私がラクをしているだけに見えてしまうのですが(笑)」

後藤さんが運転士となって数年後、221系が登場した。

大きな窓が特徴の221系(筆者撮影)

「制御方式はあまり変わっていませんが、最高速度が時速120kmになったほか、ブレーキの方式が変わったことで反応がとてもよくなり、さらに運転がしやすくなりました」

221系と言えば乗客や鉄道ファンにとっては大きな窓が特徴だが、運転するうえではあまり変化はなかったという。

「乗務員室越しに前面の風景を楽しむお客様もおられましたが、運転中はつねに四方八方に気を配っているため、気になることはありませんでした。下り列車で西日がきつい夏の日に、『ちょっと暑いかな』と思うくらいでしたね」

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