続々登場、「電気式気動車」は電車か気動車か 動力エネルギーの多様化で新型車両が百花繚乱

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男鹿線のACCUMがJR九州と同じ日立のA-trainであるのも、同じ理由が察せられる。同じ蓄電池電車と言っても交流版のEV-E801系は、烏山線の直流版EV-E301系とは搭載機器もその艤装も別物で、全くの新設計が必要になるが、量産はしないから高価になる。したがって、コストダウンのためには、同じころJR九州が筑豊本線支線向けに新造したBEC819系DENCHA(Dual Energy Charge Train)と基本を一にするのが理に適っている。そこで多少の内外装のカスタマイズと寒冷地仕様の追加などを行って、導入したわけである。

さらに蓄電池は一定期間の使用で消耗したら交換しなければならず、初期コストだけの問題ではすまない。その面でも投入線区や列車を吟味する必要がある。今後、蓄電池の価格が下がればハイブリッド車のランニングコストも低減される可能性があるので、自動車はじめ他の分野での需要拡大や技術革新が期待されている。

このようなコストの課題を最大の理由に、今後の主流と考えられたのが電気式気動車だ。回生ブレーキによるエネルギー回収のメリットには目をつぶり、ハイブリッド車両から蓄電池駆動の部分を除いた構成となる。

さように蓄電池の影響は大きく、現在のところ液体式気動車とハイブリッド車両、電気式気動車のランニングコストの差はあまりないと、JR東日本も認める。車両価格は明らかに高い。しかし、エンジン以外のシステムが電車化したメリットは大きい。電気式気動車も同様である。つまり、機械部品が大幅に減ってメンテナンスの労力が減ることに加え、車両基地の施設や人員面でも電車の技術の応用や共通化が図れる。この面のコストダウン効果は大であり、安全・安定性の向上にも資するものである。

数々の新型車両は電車? 気動車?

さて、非電化路線に従来にないタイプの車両が生み出されている中、はたしてそれは“気動車”なのか“電車”なのかという根本的な、というより鉄道ファンにありがちな素朴な疑問が湧いてくる。

40系気動車に代わり磐越西線の主力車両となったGV-E400系。ディーゼルエンジンで発電した電力でモーターを駆動する電気式気動車(撮影:山井美希)

JR東日本はGV-E400系を電気式気動車とし、EV-E301系、EV-E801系を蓄電池電車と紹介する。HB-E210系やリゾート車はハイブリッド車であり、そこには「気動車」や「電車」の文字が組み込まれていないのだ。小海線を走るキハE200形も、キハと付くもののハイブリッド気動車とは称していない。

一方、北海道まで走るクルーズ列車のE001系「四季島」は自社の電化区間は青函トンネル区間を含めて電車として運転され、非電化区間や道内は集約したエンジンで発電した電力で走行し、非電化区間では電気式気動車と言えるわけだが、新しい「EDC」方式と名付けた。無理に電気動車と訳さないほうがよさそうだ。

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