コロナで強制移住した男性「田舎暮らしの実態」 食事や仕事、生活費、人間関係はどうなのか

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米こそ購入しているものの、食費の支出は激減した。筆者は魚が大好物なのだが、山奥では新鮮な魚が手に入りにくくなるのではないかと心配したことも、今になっては杞憂だった。30分ぐらい自動車を走らせれば、津市や松坂市のスーパーに買い物に行け、新鮮な魚が手に入る。

また、ありがたいことに、今住んでいる場所には週2回、移動販売車が庭先に巡回してきてくれる。「市場で安めの魚介を仕入れている」と店主が言うように、ふぞろいだったり、獲れすぎたりして安値で競り落とされた新鮮な魚介が、スーパーと同等か、それよりも安い値段で売っているので、ちょくちょく利用している。

都会生活に比べ圧倒的に金銭の支出は減った

煮炊きに暖房、風呂と薪を大量に使うため、購入した小さな山林の一部を伐採して大量の薪を確保した。さすがに山の中だけあって、広大な山林を持つ知人から薪になる木材をもらう機会も多く、エネルギー源には困らない。薪割りも、スパッと割れたときの爽快感がたまらず、苦にならない。

広い畑を維持するのは大変ではないかと思っていたが、家の敷地内にあるため、今は美しい畑を観察しながら雑草を少し取る程度。農機具を使って耕さない不耕起農法で、無農薬無肥料の育て方は手間もかからず、野菜に関しては、友人に「出荷」できる量を確保している。

知人からもらった鶏2羽と烏骨鶏4羽で、卵も毎日供給され、近所に配れるほどに。田舎では都会と違って人間関係が濃密なため、野菜などをもらう機会も多い。その際のお返しに困っていたが、今はこの卵が大活躍している。

自宅で飼育する鶏や烏骨鶏(筆者撮影)

エネルギーと食料の両方を自前で賄っており、金銭的なやりとりを伴う経済活動からほぼ切り離された生活になっている。ただ、越してきて間もないため、日曜大工のDIY資材を買ったり、海の近くに魚介類を買い出しに行ったりするぜいたくもたまに楽しむため、それなりの出費がある。

同じ移住者の隣人は、煮炊きは薪で野菜や米をつくる自給生活を送っており、6月には一度も買い物に行かなかったという。都会暮らしに比べて、圧倒的に金銭の支出は減り、生活のためにあくせく仕事をする必要はなくなった。

まだまだ田舎生活のメリットはある。神奈川県の家でも薪ストーブを設置していたが、住宅密集地だったため、やはりストーブが排出する煙には気を使った。今は、薪ストーブや五右衛門風呂、七輪で盛大に火を燃やし、煙も出し放題。趣味のピアノも、早朝や深夜など時間を問わずに大音響で楽しめるのも田舎ならでは。

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