セブンは「単なる小売業」から変わっていく 鈴木康弘氏が明かすオムニチャネル戦略

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オムニ実現が生む相乗効果

――セブンでは発行したカードごとに顧客情報を管理しており、同じ人がナナコやアイワイカードなどグループのカードを使った時の情報は一元化されていない。

鈴木社長は、オムニチャネル実現には「スピード感が重要」と強調

今後はどのカード情報を引っ張っても、顧客を特定できるようにする。顧客からみたときに一枚のカードに統合されるのではなく「Aさんのナナコがこれなら、アイワイカードはこれ」というように論理的に統合する。

今あるものを壊して再構築するのはとても大変だ。だが、オムニチャネルというまったく新しい取り組みのなかで作るネットIDにすべての情報をひもづける。それほど大変なことではない。

各社で異なる商品コードの統一も同じだ。現在は同じ百貨店同士でも「この商品は池袋西武にはないが、横浜そごうにはある」と確認できる仕組みがない。これもネット上でインターフェースを作れば統合できる。

 システム構築のためには投資が必要だ。昨年8月、グループとして本格的にオムニチャネルに取り組むという機関決定がなされた。いままでの投資というのは事業会社ごとに投資で仲良く出しあっていた。今はセブン&アイHDが中心になってくれているからできる。

――セブン&アイHDの村田紀敏社長は以前、「オムニ関連の投資額は1000億円ぐらいになるのでは」と話していた。

システム投資だけであれば、今後3年で数百億円だろう。物流や販売促進、ブランディングなどもトータルにやればそれぐらいになるかもしれない。そのくらいの覚悟でやるということならば、現場にとってはとてもありがたい。

オムニチャネルはセブンにとってまさにシナジー(相乗効果)だ。すでに大きな実績としてセブンプレミアム(セブングループのプライベートブランド商品)がある。 ここで一定の成果を上げられたことが、鈴木会長がオムニチャネルに本気になったきっかけかもしれない。セブンプレミアムが軌道に乗らないうちにオムニチャネルに取り組んでいたら、グループ各社がバラバラになっていた気がする。

――今後の課題は。

まったく不安はない。あえて挙げるなら実行力。時間をかければ当然できるものを、スピード感をもって実行しなければならない。あとは現場の販売員にまでしっかりとオムニチャネルを理解してもらえるかどうかだ。

うちには伊藤雅俊名誉会長や鈴木敏文会長といった「創業者」がいて、2人とも後押しをしてくれている。オムニチャネルという重大な節目のときに創業者がいてくれるほど安心できることない。

(撮影:今井康一)

※『週刊東洋経済』2014年4月26日号(4月21日発売)では、「小売り激変」と題した特集記事を掲載。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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