セブンは「単なる小売業」から変わっていく 鈴木康弘氏が明かすオムニチャネル戦略

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 「セブン&アイのような流通企業はほかにない」――。セブン&アイ・ネットメディアの鈴木康弘社長はこう自信をのぞかせる。同社は3月、セブンネットショッピングを吸収合併し、セブン&アイグループで「オムニチャネル戦略推進の中心的な役割を担う会社」と位置づけられた。それと併せて社長に就いたのが鈴木氏だ。
 「オムニチャネル」とはパソコンやスマートフォンの普及を背景に、ネットやカタログ、実店舗などあらゆる販路を組み合わせ、いつでもどこでも買い物ができるようにすること。最近では、さまざまな企業が新たな戦略として掲げている。
 ソフトバンクからセブンネットショッピングなど、一貫してIT分野に携わってきた鈴木社長は、セブングループが総力を上げて取り組むオムニチャネル戦略を担う中心人物の1人。そして、セブン&アイ・ホールディングス(HD)会長兼CEOの鈴木敏文氏の次男でもある。セブンの考えるオムニチャネルとは何なのかを聞いた。

――オムニチャネル実現に向け、いまどのような体制なのか。

昨年9月、グループ各社の社長や役員など50人が10日間の日程で米国に向かった。最初は私一人の予定だったが、セブン&アイHDの鈴木会長から「皆で行って来い」という指示が出て、米国百貨店のメイシーズや薬局のウォルグリーンなどを見てきた。

店でも家でも同じように買い物ができるというオムニチャネルの第一段階が実現された米国では課題も見え始めている。それは、どこでも買えるという便利さだけではだめで、商品力や接客も重要だということ。実際に米国では接客のレベルが追い付かず、オムニチャネルがうまくいっていない企業もある。

これまでグループの社長や役員が10日間も一緒に過ごすことなどなかった。いつもと違った海外という環境の中でいろんな話ができた。業態も店舗もたくさん持つ私たちが一緒に真剣に何か取り組めば、もっとすごいサービスができるはずだというふうに、皆のベクトルをそろえることができた。

全店舗で数百万の商品を受け取れる

帰国後はまず2020年の消費行動の仮説を立てることから始めた。職業や収入、性別、年齢など120の人物像を設定し、朝から晩までの行動を洗い出した。

たとえば都会に住む人が地方にいる高齢の親の安否確認をネットでしたり、働くお母さんが子どもの体操着を急きょ用意するためにネットで対応したり、若い人はグーグルグラスのようなものを使っていたり。230くらいのサービスを考えた。これらを実現するため、現在は会員、サイト、店舗、商品、物流、メディア、ビッグデータの7つのワーキンググループ(WG)にわかれてシステムの構築を行っている。IT関連ではNECなど外部企業にも入ってもらっている。

――具体的にはどのようなサービスを実現するのか。

手前みそかもしれないが、セブン&アイのような流通業はほかにないと思っている。グループ内にコンビニ、スーパー、百貨店、専門店と多様な業態を持ち、店舗数は1.7万と世界一。こうした特徴を最大限生かしたい。具体的には、百貨店で扱う銘菓が近くのコンビニでいつでも受け取れる世界を実現する。米国でもそうした次元に至っている企業はない。

来年夏にはグループで扱う数百万に及ぶ商品すべてを、グループの全店舗で受け取れるようにしたい。これまでのセブン&アイは店にある物しか売ってこなかった。セブン-イレブンなら、店内にある3000の商品をどう売るかをこの40年間考えてきた。グループの百貨店であるそごう・西武は24店舗しかないが、グループ1.7万店で百貨店の商品も扱えるということは、百貨店数が1.7万店になることともいえる。16年には店舗内の接客をネットとつなげてレベルアップしたい。

今後3年くらいである程度の形を作り上げ、単なる小売業から情報流通業に変わっていたい。今まではモノを動かす小売だったが、情報も動かす。たとえば購買履歴などを分析して得たビッグデータを駆使し、一人ひとりにあった商品をリコメンドできるようにするのも情報を動かすことだ。

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