五木寛之「コロナ後は三散の時代がやってくる」 再び注目「大河の一滴」著者が語る今後の生き方

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教育でも、文部科学省の指導のもとでどの学校も同じようなプログラムを組むのではなく、個々の学校がそれぞれ独自の教育を実践する可能性も出てくる。大学ぐらいになると、場所に縛られず、遠方にいても授業をオンラインで受けて卒業できるようになるかもしれませんね。

スポーツなども、甲子園のように全国の学校が集まる大会が中止になると、それぞれの地方で対抗試合を行うしかありません。

――グローバルな水準でも分散が進むでしょうか?

これまではグローバリゼーションの掛け声のもとで、グローバル企業が幅を利かせていたけれど、グローバルな資本も分散していき、各国が独自路線を取り始めるんじゃないでしょうか。ドナルド・トランプ大統領がアメリカ・ファーストを唱えたり、イギリスがEUを離脱したりと、その兆候はすでにコロナ前から表れていました。そういった傾向により拍車がかかっていくように思います。

余談になりますが、先日、自衛隊に「宇宙作戦隊」という部隊が作られました。これも一種の軍隊組織の分散でしょう。いずれウイルス対策隊のような部隊ができるかもしれません。

「拡散」がより早く、ただし「操作的」に注意

「三散」の2つ目は「拡散」です。ウイルスの拡散はまさに現在起きていることです。そして、これもすでに起きていることですが、情報の拡散スピードがより速くなっていく。今や、香港のデモの様子がリアルタイムで世界中に伝わっていきます。音楽も、昔は「北国の春」のようにゆっくりと火がついて大ヒットする曲もありましたが、今や一夜にして情報が拡散し、世界中に知れわたるような曲があったりする。

ただ、拡散の仕方が非常に操作的になっていることも感じます。フェイクニュースを意図的に流すのもそうです。だから民衆の声が自然発生的に拡がっていくというよりも、よきにつけ悪しきにつけ、何らかの意図のもとで、1つの流れを一気につくりだすような形で情報が拡散していく傾向が強まっていくと思います。

――「三散」の3つ目は?

「逃散(ちょうさん)」という言葉を知っていますか? これは歴史的な用語です。中世、近世という封建時代、農民の抵抗の仕方には2つあります。1つは一揆ですね。実力で団結し、武器を持って権力に立ち向かう。これは誰でも知ってますね。それに対してもう1つ、「逃散」というものがありました。こちらは文字どおり、住んでいる土地から働き手が逃げるわけです。

よく知られている例に、薩摩藩にいた浄土真宗門徒の逃散があります。薩摩藩では、16世紀末から一向一揆を恐れて、一向宗つまり浄土真宗の信仰を禁止し、大変な弾圧を行った。そこで一種の抵抗として、門徒の大移動が起こった。

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