バタバタと自主廃業、電炉を悩ます「四重苦」

五輪特需に沸くはずの建設用鋼材メーカーに異変

稼働を停止し、解体を待つ大三製鋼の電炉(撮影:尾形文繁)

東京都江東区。物流倉庫が立ち並ぶ一角に、目的の製鉄所があった。「この電炉も、あとは解体を待つだけです」──。大三製鋼の香取伸明社長は、寂しそうにつぶやいた。

同社は1949年創業の老舗電炉メーカー。解体業者などから鉄スクラップを購入し、電気炉で溶かし、建築や造船業界向けに鋼材を生産してきた。直近の売上高は69億円。2期連続で営業赤字に沈んでいる。

創業家出身の3代目として2009年に就任した香取社長。リーマンショック後の需要低迷やコスト構造の変化に悩んだ末、2月5日に電炉事業からの撤退を決断した。同月末に工場の操業を停止し、生産部門の従業員は3月中旬に全員が退職。現在は、香取社長と残った従業員で残務処理を進めている。

営業赤字が続いていたが、自己資本比率は2割超を維持してきた。「債権者に迷惑をかける前に撤退しようと思った。悔いがない決断だったと信じている」(香取社長)。

1カ月余りで3社が自主廃業

鉄鋼業界にとって衝撃だったのは、自主廃業が大三製鋼だけにとどまらなかったことだ。2月19日には、新日鉄住金系の新北海鋼業(北海道小樽市)が3月末で解散すると発表。3月14日には、中央圧延(埼玉県越谷市)が同月末に生産を停止し、事業から撤退すると明らかにした。

救済色の強い合併が主流だった電炉業界で、1カ月余りで3社が廃業を決めたのは異例の事態。背景には、業界が抱える「四重苦」がある。

次ページ深刻な需要の長期低迷
関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
JR九州“脱鉄道”の成算

今年、上場を果たしたJR九州。豪華寝台列車「ななつ星in九州」は話題になった。しかし、人口減少などもあって鉄道事業の先行きは暗い。成長は非鉄道事業の成否に懸かっている。