中国で誰が幽霊不動産を買っているのか? いま、中国で何が起きているのか②

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彼らのような富裕層が例外なく強調するのは、「不動産の資産価値が崩れない限り、中国経済は安定している」ということだ。「中国政府は国家の威信にかけても、不動産の下落は阻止する。だから問題はない」と言い切るのだ。

当然ながら、彼らは、理財商品のデフォルトが起こっていることは重々承知だ。だがそれは小さな規模であり、中国経済全体に影響を与えるものではないという意見なのだ。彼らほどリスクに敏感なプロが、なぜこれほど楽観的になれるのか。これを深掘りしてみたい。

今回は2人の旧友に会ったのだが、まずはスティーブン・チュー(62歳仮名)からご紹介しよう。彼は、広州出身の香港トレーダーである。ゴルフ三昧で毎週2回は、香港の名門ゴルフコースで楽しんでいる。仕事はアメリカ帰りの息子に任せて自分はレアメタルの国際会議のはしごをしながら、世界各地の名門コースを回っている。彼に、中国の富裕層がどのように蓄財しているのかを聞いてみた。

彼によると、富裕層(一般的に1億元以上の資産家をさす)は、おおよそ4種類に分かれるという。1)まず政府関係者で利権を握って、賄賂をもらった連中。何もしなくても不動産でも家でも車でも手に入れることができる。こうした富裕層が約2%はいるという。

2)次に、これらの政府関係者に取り入って、安く国家の土地や資産を分けてもらう連中。これが5%くらい。

3)さらに、不動産会社を経営してきた連中が同様に2%くらいいて、4)最後に個人事業主で成功した連中が20%くらいいる、というのがスティーブンの分析である。合計すると、約30%近くになるので多すぎるのではないかと指摘すると、「大都市に住んでいる住民の中の、金持ちグループの比率だから」こんなものらしい。

「全国規模で言えば、その3分の1」だというが、それでも13億人のうち、1.3億人がお金持ちということになる。実に、日本の人口以上の金持ちが存在するという計算だが、にわかには信じられない。

さて、もう一人の友人はダニエル・チャン(52歳仮名)である。彼もレアメタルトレーダーでは立志伝中の人物だが、彼はケミカル分野で日本企業の代理店になって大儲けをしてから、レアメタルの世界に入ってきた香港トレーダーである。息子が英国の大学から戻ってきており、その息子に経営の勉強をさせている。

ダニエルは人柄が良すぎて今まで二人の部下に裏切られたので経営は身内だけで固めるようだ。彼にも中国人の資産家がどのように蓄財したのかを聞いてみた。

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