日本の「水輸出ビジネス」が苦戦するワケ インドで展開する水プロジェクト<第3回>
国が推進し、官民連携で海外進出が試みられる「水インフラ」の輸出。しかし実際には、多くの現場で順調に成果が上がっているとは言いがたい。実はアグラでの計画も例外ではない。プロジェクトを阻む問題とは何か。インド・アグラから、海外で展開する日本の水事業の姿に迫る。
※<第1回目>世界最悪の汚さ、インドの水道水を救えるか
<第2回目>インドの水道インフラは、なぜ崩壊したのか
苦戦する日の丸水道隊
外国で日本が進める水ビジネスは、軒並み厳しい状況にあるという。日本から海外に進出しているある水道事業会社の社員は、その話になるとやや口が重い。
「国がインフラ輸出を掲げている中で、『実際はぜんぜんダメでしょう、停滞しています』とは言えない」
彼らは民間事業者だが、国際援助でも、国が違っても、海外の水道事業への参入は容易ではないのが現状らしい。もちろん、インドも例に漏れない。
インドでは憲法上、水に関する事業は州政府の管轄とされている。ただし、中央政府は環境保護や都市開発の観点から、水事業の規制には関与する。水に関する権限は国と州、さらに現場で直接事業を行う地方自治体との間で重複し、水利関係の複雑さと不透明さから、水道事業は数あるインフラ事業の中で最も外部から参入しにくい分野だという。
おまけに、そこには時として、排他的な利権争奪戦を繰り返す、あの“ヘドロ”のような人々が待ち構える。
海外展開に必要なものとは
ガンジス川からの導水事業は大掛かりな工事が予想されるが、日本の技術レベルならそう難しいものではないという。しかしながら、行政機関との調整には、いまだ多くの時間を費やし、遅々として前に進まない。国内外の水事業に詳しいコンサルタントはこう指摘する。
「インドのほかのプロジェクトも同じ。東南アジアでも、どこでも苦労しています。事情が日本と違う海外の現場で、しっかりマネジメントできる人材が少ない。自治体からなんて、まったくいませんね」
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