世界最悪の汚さ、インドの水道水を救えるか

インドで展開する水プロジェクト<第1回>

 「インドで最悪の水環境」。そう呼ばれるのが、世界遺産タージマハルが建つ町アグラだ。世界で最も劣悪な水を飲まざるをえない130万市民。彼らの水環境改善のため、日本の支援で画期的なプロジェクトが始まっている。

 国が推進し、官民連携で海外進出が試みられる「水インフラ」の輸出。しかし実際には、多くの現場で順調に成果が上がっているとは言いがたい。実はアグラでの計画も例外ではない。プロジェクトを阻む問題とは何か。インド・アグラから、海外で展開する日本の水事業の姿に迫る。
 

ガンジス川から水を引く壮大な計画

「ガンガージャル!」

イギリス人の水道技師ブーン氏がアグラの下町を歩くと、住民からよくこんな声がかかる。直接は「ガンジス川の水」という意味だが、住民たちの言葉は地元水道局がブーン氏たちと進めている、あるプロジェクトを指してのものだ。

 アグラでも低所得者層が集まるトランスヤムナ地区。多くの住民がその存在を知るプロジェクトとは、正式には「アグラ上水道整備事業(Agra Water Supply Project)」と呼ばれる。はるか300キロメートル東方を流れるガンジス川からアグラまで水を引き運び、導水した「ガンガージャル」によってアグラ市内の水環境の改善を行おうという計画である。

すでに途中までは、ガンジス川を水源とした灌漑水路が稼働していて、きれいで豊富な水が主に農業目的で使われている。その用水路をなんとか伸張させ、アグラ市内まで水を持って来ることを目指している。この“ガンガージャル・プロジェクト”が実現すれば、巨大河川を水源に使うことで、アグラの人々に安全かつ安定的な上水供給が可能になるという。

インドのヒンドゥー教徒の間では、死後に聖なる川「ガンガー」へ遺骨を流すと極楽往生すると信じられている。多くの人たちも巡礼に訪れるガンジス川は、インド最大級の信仰対象に位置づけられ、「ガンガージャル」とはこの国の人々にとって単なる川の水以上の意味を持つ。

トランスヤムナ地区の住民が口にする言葉にも、もちろん宗教上の特別な感情は込められている。ただし、ここではそれ以上にガンガージャル・プロジェクトへの大きな期待がある。訴えかけるように叫ぶ彼らの声は、安全な水を求めるアグラ市民の切実な願いなのだ。

 
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