「弱者の恐喝」を排し「堂々たる政治」を

「弱者の恐喝」を排し「堂々たる政治」を

塩田潮

 郵政株式売却凍結法案では国会を延長させて強行採決で可決・成立に持ち込んだ。普天間基地問題では連立離脱を示唆して「県外・国外移設」に固執する。8日に決着した第2次補正予算案では当初の2兆7000億円を7兆2000億円まで増額させた。郵政法案は国民新党、普天間は社民党、補正予算案は両党共闘による「ごり押しの成果」だ。

 「弱者の恐喝」という言葉がある。
 チーム内の少数派や弱体勢力が、言い分を聞かなければチームを抜けるぞと言って多数派や中枢勢力を脅し、要求を通そうとする手法である。歴史上、有名なのは佐藤内閣時代の沖縄返還で、沖縄を早く返さないと対米感情が悪化して日米関係が危機に直面するぞと「弱者」の日本がアメリカ側に迫り、返還を実現した。
 現政権での「弱者の恐喝」は大政党の民主党に対して、合計で20分の1以下の社民党と国民新党が、参議院過半数割れという民主党の弱みに付け入って「離脱カード」を振りかざす。
 民主党側が首相の指導力、日米関係、財政規律などよりも連立維持を重視するのは、とくに鳩山首相や小沢幹事長らが1993年以降の連立政権の「失敗の歴史」を強く意識しているからだ。細川政権の破綻、羽田政権での社会党、小渕政権での小沢自由党の政権離脱等々の「失敗の教訓」を忘れずに生かす政権運営を心がけている面がある。

 だが、新政権は、国民が期待する政治・行政の変革や内政・外交の安定的舵取りよりも連立維持という内向きの課題を優先させているように映る。まさか鳩山内閣が普天間問題で、37年前の沖縄返還のように、アメリカに対して「弱者の恐喝」路線による決着を想定しているとは思わないが、結果的に瀬戸際外交という綱渡りを演じると、内外の二重の「弱者の恐喝」で、政権は一気に危機に直面しかねない。
 国民の圧倒的な支持を得て政権を担った鳩山首相は「弱者の恐喝」を排して、いまこそ「堂々たる政治」を心がけるべきではないか。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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