コロナ騒動で光るポーランド人の「切り替え術」 リアルがダメならオンラインがあるだろう

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感染抑制のための措置が発表されて以来、ワルシャワの街を歩く人は激減した。集客も見込めないし、「他人との適切な距離」の維持も難しいので、規制対象外の小規模イベントまで軒並み中止になった。3月24日には「50人を超える集会禁止」だったのが「2名を超えての集まりは禁止(ミサなど宗教行事の場合は最大5名)」に厳格化されたが、これは「仲間同士でつるむな」ということだろう。

カード払いを推奨する貼り紙は、街のいたるところで見られる(筆者撮影)

イベントのほとんどは中止になったと述べたが、正確にいうとオンラインに移行した。今やオンラインイベントは珍しくもないが、その迅速さにはちょっと驚いた。

早いものは政府発表があるやいなや即日、オンラインのライブ配信に切り替わった。ポーランド人は意外と気が短いと感じることも間々あるのだが、ポジティブな見方をすれば決断と行動が早いともいえる。

なんでもかんでもオンライン化が進行中

さらに、家にこもる→退屈するということを見越してか、ヨガ、ダンスレッスン、語学レッスン、ギター教室、料理教室などがのオンラインイベントが次々と立ち上がり、Facebookにはこうした情報でいっぱいに。このあたりの動きもかなりスピーディーだった。純粋にボランティアなものもあるが、ビジネスにつなげようという思惑が見えるものも。

経済が大打撃を受けることは避けられないのでみんな必死なのである。コロナ禍後の勝ち組・負け組を分ける勝負はすでに始まっているのかもしれない。しかし、なんでもかんでもオンライン化されるとそれが当たり前になり、目新しさがなくなる。大量の情報に埋もれることなく差別化を図るには工夫が必要だ。

例えば、ワルシャワで料理教室を運営する知人は、食材の宅配とオンライン料理教室を組み合わせたサービスを始めた。受講者はあらかじめ配達された食材を使って、自宅にいながら料理教室に参加できる。インタラクティブなので作りながら講師に質問もでき、ポーランド全域から参加できるという。

本来なら料理教室にとって、感染症の大流行というのは致命的ともいえる痛手のはずだが、ちょっとしたアイデアで新たな商機につながる可能性もある。

ワルシャワはスタートアップコミュニティーが活発で、筆者もスタートアップ関連のイベントによく行くが、今後は「コロナ対応」をウリにしたスタートアップが出てくるかもしれない。

3月28日現在、ポーランドはEU(欧州連合)諸国の中では5番目の人口の多さにもかかわらず、コロナウイルス感染者数は約1600人と比較的少ない。

スーパーにモノが十分あり、オンラインショッピングも不自由ない。それがメンタル面のサポートになり、商魂たくましくビジネスチャンスを狙う力につながっているのではないだろうか。ただし、規制はどんどん厳しくなっており、長引くほど社会は疲弊する。その時、また新たな切り替え術を見せてくれることを少し期待している。

ミハシヤ ジャーナリスト、PRプランナー

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Michasia

大学卒業後、出版社勤務を経て独立。新聞、雑誌などの記事広告をメインに執筆。キャリアは約30年。得意分野は金融・ビジネスなど。2017年より拠点をポーランドのワルシャワに移し、ジャーナリスト、及びPRプランナーとして活動。現地のスタートアップ事情にも詳しい。

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