コロナで「バイト代が激減」大学生の静かな悲鳴 外出自粛や休校で飲食店などシフト入れず

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外出自粛、テレワーク拡大で追い風が吹いていそうな業界でも、大学生は余剰人材になりつつある。中部地方の国立大学大学院に留学する中国人の林さん(仮名、26歳)は「この1カ月、仕事の募集がまったく来ない」と嘆いた。

林さんの所属する研究室はアルバイトを禁止している。だが仕送りが少なく、働かざるをえない林さんは、弁当工場でアルバイトをしている。人が足りないときに募集のメッセージがLINEで送られてきて柔軟に働くことができ、かつ大学の知り合いに見つかるリスクも低いからだ。

2月から仕事の依頼がない理由を、林さんは「工場にはパートの人がいて、それでも足りないときに派遣に声がかかるようだ。パートの時給は980円で、僕たち派遣は1280円。はっきりしたことはわからないけど、パートで足りているから募集がないのだと思う」と推測する。

学生の雇用喪失が消費縮小につながる

林さんは2月には中国に帰省するつもりだったが、新型コロナウイルスの影響で取りやめた。ただ中国の政策で航空券に支払ったお金は全額戻ってきている。当面はそのお金を生活費にあてて学内で実験の助手をし、細々と収入を得ている。

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母国の中国と比べ、日本の新型コロナ対策は生活への制限が緩い代わりに、先が見通しにくい。林さんは「4月になっても工場の募集が来なければ、ラーメン屋でもコンビニでも仕事を探すつもりだ」と語った。

アルバイトは消えたのに、新年度の講義開始が延期され、学生たちはいつもより長い春休みを持て余している。取材した学生たちはいずれも短期バイトを探したが、なかなか見つからないため、自宅で勉強したり、本を読んで過ごしている。

ホテルのレストランで働く佐藤さんは、「今の状況が続くなら、極力お金を使わずにじっとしてしのぐしかない」と話した。若者たちが直面している、こうした雇用の喪失は、消費の縮小を生むという悪循環にもつながることが懸念される。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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